タンパク質翻訳後修飾を介した内因性・外因性の脂溶性リガンドによる受容体シグナリング制御機構を解析し、酸素ストレスによる適応応答制御における脂溶性リガンドの機能に関する以下の研究プロジェクトを展開した。 (1) 脂溶性リガンドによるNGF受容体シグナリングの活性化 : PTP1Bについて一過的過剰発現系、及びsiRNAを用いたPTP抑制系などの分子生物学的手法を用いた解析により、NGF受容体刺激によるシグナル伝達機構の詳細な解析を行い、神経突起伸張におけるPTP1Bの関与を確立した。さらにPTP1B変異体を用いたサブストレートトラッピング法により、TrkAとPTP1Bのタンパク質間相互作用を詳細に解析し、PTP1BがTrkAの基質であることを直接的に証明した。また、6-メチルスルフィニルイソチオシアネート(6-HITC)などの脂溶性リガンドがPTP1Bに作用していることを証明し、PTP1Bのセンサーとしての役割を強く示唆する結果を得た。 (2) 脂溶性リガンド-タンパク質複合体による炎症応答 : プロスタグランジンD2代謝物が血清タンパク質への結合を介し、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の遺伝子発現を亢進することを見いだした。その複合体形成は共有結合を介しており、LC-MS/MSを用いた結合部位の同定、結晶化による立体構造解析などを進めている。また、COX-2発現誘導機構の解析を進め、自然免疫に関連した受容体の関与を示唆するデータを得た。 (3) 6-HITCなどの脂溶性リガンドの標的タンパク質の同定 : クリックケミストリーを用いた6-HITC標的タンパク質の同定を行い、10種類以上のタンパク質を同定した。これらの中で脂溶性リガンドセンサーとしての役割を担う分子の決定を行っている。
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