活性酸素種や脂質アルデヒドと生体分子の反応により生成される修飾付加体は、酸化ストレスの検出において、ほとんど唯一の直接的な手掛かりとなる。そのため、タンパク質やDNAに見られる修飾付加体を酸化ストレスマーカーと捉え、疾病と酸化ストレスの関係性が解析されている。これまでに数々の脂質アルデヒド修飾付加体が報告されているが、脂質アルデヒドとタンパク質の反応が複雑であることに加え、多種多様の脂質アルデヒドが生成されるために、報告されていない修飾付加体が未だ数多く存在すると予想される。疾病と酸化ストレスの関係性を理解するためには、これまでに報告されている修飾付加体以外にも、酸化ストレス状態にわいて生成される未知の修飾付加体を網羅的に検出し、それらの生物学的意義を明らかにしていく必要がある。そこで今年度は、タンパク質修飾付加体に焦点を絞り、新規脂質アルデヒド修飾付加体の探索・構造解析を目的に研究を行い、その結果、過酸化水素を介したn-アルカナールによるタンパク質アシル化反応を発見するとともに、新規2-ノネナールーリジン付加体の構造決定するに至った。さらに、酸化ストレス誘発発癌モデルラット及びマウスを用いたin vivo実験により、発見した修飾付加体が生体内で生成されることを明らかとすることで、酸化ストレスマーカーとしての有用性を示すことができた。
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