計画研究
本研究は一酸化窒素(NO)による細胞間シグナル伝達の機序と制御系,標的細胞におけるNOの作用を解明することを目的として研究を実施してきた.1.NOによる細胞間シグナル伝達機序:システインのニトロソ(SNO)化を介した経路とその制御系を明らかにした.ニトロソシステイン(CysNO)はアミノ酸トランスポーターにより細胞内へ入り,NOシグナルを伝達するが,この経路より大量のCysNOが短時間に流入すると,ニトロソ化(SNO)ストレスが生じてしまう.そのため,ストレス防御系としてのCysNO代謝酵素の存在が重要であることを示し,主に病的なSNOストレスの除去・低減に有効なCysNO分解酵素(CysNOR)を新たに同定し,内皮系細胞におけるニトロソストレス防御系として機能していることを動物個体レベルでも明らかにした.2.標的細胞におけるNOの作用:血管系を解析対象とし,内皮細胞から産生されたNOが,その標的である平滑筋細胞においてこれまで知られてきた弛緩反応だけではなく,TxnIP:チオレドキシン活性を変化させることにより抗酸化能の制御に関わっていることを示した.この制御系は内皮型NOS由来のNOと平滑筋細胞に発現した誘導型NOSからのNOでは正反対の反応を引き起こすことを見出し,NOの生理・病態的役割を量的な観点から動物個体レベルで明らかにした.3.ヒト病態との関わり:NOの細胞間伝達が関与する病態として,腸管出血性大腸菌感染症(EHEC)をモデルとした.ヒトマクロファージから大量に産生されたNOはEHECへ伝わり殺菌的に作用するが,EHEC内部にはNOを消去するNorVが存在し,EHECの病原性を規定する主要因子となっていた.NorV遺伝子の野生型を有する菌株が臨床重症例を生み出す原因と考えられた.今後臨床検査へ応用され,高病原性EHECの迅速判定に活用が期待されている.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
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