研究概要 |
活性酸素による細胞内シグナル伝達制御は,主に活性酸素の生成系・活性酸素センサー・エフェクターのシグナル複合体形成によって的確に制御されていると考えられているが,その分子機構はよくわかっていない.本年度は,心臓リモデリングに関わるアンジオテンシン(AT1)受容体の発現調節機構に着目し,心線維芽細胞を用いて,ATP受容体刺激がAT1受容体量を低下させることを見出した.このメカニズムには,ATPによるCa^<2+>流入依存的なiNosの発現誘導および一酸化窒素(NO)の生成による転写因子NF-kBのp65サブユニットのS-ニトロシル化修飾が関与することを明らかにした.さらに圧負荷マウス心臓におけるiNOSタンパクの発現誘導およびAT1受容体の発現低下が,P2Y受容体阻害剤により抑制されることを見出した.以上の結果から,ATP-iNOS-NF-kBのS-ニトロシル化-AT1発現低下というスキームが成り立つことが個体レベルでも明らかになった.一方,Gi蛋白質の薬理学的阻害剤として広く用いられている百日咳毒素(Pertussis toxin)がGi蛋白質のADPリボシル化非依存的に活性酸素を生成し,AT1受容体数を増加させることを見出した.この分子機構には,Toll様受容体(TLR4)の活性化によるRacの活性化およびNADPH oxidaseを介した活性酸素生成が関与していることが明らかとなった.
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