計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
かつて酸素毒の原因として位置づけられてきた活性酸素が、最近では細胞内シグナル伝達における主要なメディエーターとなることが明らかにされてきている。この分子機構には、蛋白質の活性中心に存在するシステインの酸化修飾が関与すると考えられる。我々は、心血管病を制御する神経液性因子であるアンジオテンシンIIの責任受容体(AT1R)が活性酸素により発現調節を受けることに着目し、その分子制御機構を解析した。受容体-Gi蛋白質の共役を阻害する百日咳毒素は、活性酸素の生成を介してAT1R発現量を増加する。百日咳毒素は、Toll様受容体4の活性化によるNADPHオキシダーゼ依存的な活性酸素生成とそれに続くIκBのリン酸化に依存した分解がNFκB転写活性を増加させることでAT1R発現量を増加させることを明らかにした。一方、炎症性リガンドの一つである細胞外ヌクレオチド(ATP)が、誘導型一酸化窒素(NO)合成酵素(iNOS)の発現を増加させ、細胞質で転写因子NFκBと複合体を形成することで、NFκBのシステインを局所的に修飾(S-ニトロソ化)し、アンジオテンシン受容体数を低下させることを見出した。以上の結果から、活性酸素の生成系とセンサー/エフェクター分子との相互作用がシグナル伝達経路の特異性を作り出す可能性を示した。さらに、心不全初期にiNOSを介して生成されるNOが心筋保護に働く一方で、慢性期の心臓で生成されるNOが細胞内に存在するGTPやcGMPと反応することで親電子性の2次生成物(8-nitro-cGMP)を形成すること、8-nitro-cGMPが低分子量G蛋白質H-Rasのシステインを特異的に修飾(S-グアニル化)することで細胞老化を誘導し、心機能不全を引き起こす可能性を新たに見出した。興味深いことに、硫化水素(H2S)が、ガスではなく求核性の高いアニオン(HS?)として新電子物質を直接消去すること、心筋梗塞モデルマウスへのNaHS投与により慢性心不全が改善されることを個体レベルで実証した。
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