計画研究
今年度では、筋収縮を行うミオシン分子(ミオシンII)を対象とした実験系の構築とその検証を進めた。マイクロ秒領域での負荷を印加できる1分子計測装置をカスタマイズすることによって、ミオシンIIに対する検証が可能となった。始めにミオシンII1分子-数分子での相互作用を検出し過去の知見と同様の結果を得ることを確認できた。次いで、100マイクロ秒以内に数ピコニュートンの負荷をミオシン分子の前後方向に加え、エネルギー変換で最も重要となるBrownian-search-and-catch過程に対する負荷依存性を調べた。昨年度までの成果で明らかにしたミオシンVIでの実験と異なり、弱結合状態が観察されなかったため、ミオシンIIの弱結合は、100マイクロ秒以下の非常に短い結合状態であることが強く示唆された。そのため、DNAナノ材料を用いた別方向のアプローチを進めている。ミオシンIIよりもより詳細な検討が可能なミオシンVにおいては、教科書に記述されているモデルに変更を迫る新たな知見を得ることができ、Nature Communications誌にリバイス中である。ミオシンVのATPエネルギー変換においては、ミオシン分子の構造変化よりもBrownian-search-and-catch過程での寄与が大きいことを定量的に明らかにできた。ATPエネルギー変換機構の分子レベルでの描像が正確に記述できつつあり、水分子がどのように寄与できるか検証する道筋をつけることができそうである。共同研究としては、京都大学の木下教授との共著により、アクチンミオシン間の相互作用ポテンシャルに対する水の並進エントロピー効果および、細胞内のような親水性分子が存在する溶媒環境下におけるポテンシャル変化を計算することが可能となった。
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Journal of Chemical Physics
巻: 133 ページ: 045103-1-045103-11