研究概要 |
本研究は, F_1-ATPaseによるATPの加水分解自由工ネルギーと回転運動の化学力学変換のメカニズムの理解をめざして、基質, 蛋白, 生成物の水との相互作用(水和状態)に注目し, 水中でAfPを加水分解して働く分子機械特有のダイナミクスを理解することを目的としている. 平成20年度は, 試料調製のための小型超遠心機を購入し, 以下の実験を行って結果を得た. 1)既存の温度調節可能な顕微鏡を用いてF_1-ATPaseの回転の温度依存性を確認し, 今まで考慮されてこなかった反応の逆反応が低温でのステップのdwell time histogramに影響を与えていることが示唆された. 2)F_1-ATPaseの回転の主要ステップは, IArp, ADPの結合脱離によって引き起こされていることが分かっている. この過程の理解を目指してADPの結合の熱力学的解析を, 変異導入したトリプトファンの蛍光がADP結合によって減少することを利用してその温度依存性から行った. その結果, 以前熱量測定から得られていた単離βサブユニットに比べ, △G^0は近いものの, 負である△H^Oの絶対値が小さく, 正の△s^0が大きいという結果が得られた. これは複合体でのサブユニット相互作用の影響を示唆するが, 今後単離βサブユニットで蛍光測定から同様の実験を行うなどして更に研究を進める. 3)水の溶媒としての働きを直接的に検証するためにDMSOによる影響を検討した. 2mM ATP, 30%DMSOでステップらしきものが見えており, 今後どのような過程にDMSOが影響しているかについて検討する予定である. その他, 回転電場による揺らぎの解析からも興味深い結果が得られている.
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