fMRI、ERP、NIRSを用いた顔認知研究:信頼度の低い顔と高い顔に対する脳活動の違いに関して、健常被験者を用いたfMRI実験を行った。扁桃体には有意な差はなかったが、前頭葉活動に顔の種類で差が認められた。これは注意の維持と信頼度に関連があるためと考えられた。顔の虚記憶に関するfMRIを行い、虚記憶と海馬傍回の活動に関連があることを見出した。サルにおける顔認知課題をヒトのfMRI実験に応用し、種を超えた実験課題を作成した(富山大学永福智志博士との共同研究)。顔の類似度を判定するコンピュータシステムを開発し、特許出願した。 顔認知の個人差、遺伝的多型との関係:共同研究者のMunster大学Kennerknecht教授の作成した相貌失認質問紙を日本語訳し、多数例を対象とした実験を行った。この結果は現在、心理学系の国内誌に投稿中である。Kennerknecht教授を名古屋大学に招聘し、講演会を開催した。昨年度に行った顔を用いた実験被験者のDNAサンプルに対して、5-HTTLPRとBDNF (val66met)の遺伝子多型を調べた。その結果をもとにfMRIのデータを解析したところ、BDNF多型と扁桃体の活動に有意な関連が認められた。 ストレス脆弱性と顔認知:視覚的な顔の呈示と聴覚的に呈示した罵声を合わせて行い、顔に対する嫌悪条件づけfMRI実験を行った。18名の被験者の結果では、内側前頭前野と扁桃体の活動に有意差を認めた。中でも扁桃体の信号値は、顔に対するネガティブな印象の変化に相関していた。この結果は現在国際誌に投稿中である。
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