研究概要 |
人間の高次脳機能の中でも、「顔認知」は「言語認知」と並んで、他者ならびに社会に適応する上で最も重要なものの1つと考えられる。本研究の目的は、脳波、脳磁図、機能的磁気共鳴画像(fMRI)、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)といった非侵襲的脳機能測定法を用い、基礎研究および臨床研究を行うことによって、人間における顔認知機構を明らかにすることである。 NIRSを用いた研究(Nakato, et.al. Human Brain Mapping, 2008)では、顔認知に関連すると言われている側頭部の脳血流変化を計測した。対象は、生後約5ヶ月の赤ちゃんと約8ヶ月の赤ちゃんの2つの群である。正面顔と横顔を呈示し、各々の群の赤ちゃんが、横顔を顔と認知するかどうかを検査した。すると、5ヶ月児では正面顔を見た時には血流の増加が見られたが、横顔には反応が見られなかった。しかし、8ヶ月児では、正面顔と横顔の両方に対して有意な血流の増加が見られた。この結果は、赤ちゃんの顔認知の発達過程において、横顔の認知は正面顔よりも遅れ、生後8ヶ月くらいでようやく顔だと理解できることを示している。この結果は掲載誌であるHuman Brain mappingの表紙を飾り、朝日、読売を初めとして、多くの新聞で研究紹介された。 脳波を使った実験では、特殊な刺激方法(Random dots blinking)を用いて詳細に顔認知を研究した結果(Miki, et.al. Experimental brain Research, in press)と、顔認知に対する情動の影響を詳細に調べた結果(Hirai, et.al. Brain Research Bulletin, 2008)を発表した。
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