研究概要 |
人間の高次脳機能の中でも、「顔認知」は「言語認知」と並んで、他者ならびに社会に適応する上で最も重要なものの1つと考えられる。本研究の目的は、脳波、脳磁図、機能的磁気共鳴画像(fMRI)、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)といった非侵襲的脳機能測定法を用い、基礎研究および臨床研究を行うことによって、人間における顔認知機構を明らかにすることである。 random dots blinkingという特殊な刺激方法を用いて、顔を含む様々な画像を作成し、脳波を用いて人間の顔認知機構を解析した(Miki, Kakigi他、Experimental Brain Research, 2009)。実際の顔ではなくても、模式化された顔画像に対しても、顔認知中枢が活動する事を明らかにした。 顔の「出現」、「消失」、「変化」という3種類の刺激に対して、脳内のどの部位が活動するかを、脳磁図を用いて解析した(Tanaka, Kakigi他、BMC Neuroscience, 2009)。脳内の4箇所が顔認知に関連する事を見出し、その中でも、側頭葉下面の紡錘状回が重要な役割を果たすことを明らかにした。 乳児測定用に、軽くて柔らかい新型のNIRS測定プローブを開発して、乳児の顔認知機能の発達を研究している。覚醒状態の乳児を対象にしての記録が可能となったためである。赤ちゃんの顔認知の発達過程において、横顔の認知は正面顔よりも遅れ、正面顔は生後5ヶ月頃に、横顔は生後8ヶ月くらいでようやく顔だと理解できることを明らかにした(Nakato, Kakigi 他、2009)。「福笑い」のようこ、目、鼻、口などの位置を変えた顔(scrambled face)を提示したところ、生後7-8月くらいの乳児でも顔として意識されている可能性が示唆された(Honda, Kakigl 他、Brain Research, 2010)。
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