研究領域 | 東アジアにおけるエアロゾルの植物・人間系へのインパクト |
研究課題/領域番号 |
20120003
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
廣川 淳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (20262115)
|
研究分担者 |
猪俣 敏 独立行政法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 主任研究員 (80270586)
高橋 けんし 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (10303596)
|
キーワード | エアロゾル / 揮発性有機化合物 / 二次有機エアロゾル / 気相酸化反応 / 不均一反応 / 質量分析法 / レーザー分光法 |
研究概要 |
1.メタクロレイン(MACR)の気相酸化反応速度の測定 MACRはイソプレンの酸化反応により生成し、その更なる酸化反応がイソプレンからの二次有機エアロゾル(SOA)生成に関与していると考えられている。そこでMACRのOHラジカルによる酸化反応を、レーザー誘起蛍光分光法を用いて調べた。MACRとOHの二次反応速度定数は、圧力2、10、20 Torrでそれぞれ(3.2±0.4)、(3.1±0.4)、(3.4±0.4)×10^<-11> cm^3 molecule^<-1>s^<-1>と得られ、この圧力範囲内では、反応速度定数に明確な圧力依存性は認められなかった。 2.イソプレンのオゾン酸化反応による気相および粒子相成分の分析 イソプレンのオゾン酸化からSOAが生成する化学過程を明らかにするために、テフロン製バッグを用いた実験を行った。陽子移動反応-四重極質量分析計を用いて気相酸化生成物の分析を行い、イソプレンのオゾン酸化による第一世代、第二世代生成物を特定し、その濃度変化を測定した。また、負イオン化学イオン化質量分析計を用いた測定により、イソプレンのオゾン酸化反応で生成するクリーギー中間体と酸性生成物との結合体を検出することに成功した。一方、生成した粒子の濃度および粒径分布は、移動度走査型粒径選別器により測定した。また、粒子はフィルターにより捕集したのち、加熱して気化した成分を陽子移動反応-飛行時間型質量分析計により分析した。気相生成物として検出されたクリーギー中間体と酸性成分との結合体に帰属される質量ピークが検出され、これらの生成物の一部が粒子相へ分配されていると結論付けることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり、質量分析法、レーザー分光法など、本研究を遂行するための手法開発が大体終わり、それを用いた研究に入った。今年度より、代表的な植物起源炭化水素であるイソプレンに対象を絞り、その光酸化ならびにオゾン酸化反応によるSOA生成過程を調べ始めた。一部の気相反応の反応速度定数を実験的に決定するとともに、オゾン酸化における新たな化学過程を見いだすことに成功した。以上の理由より、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初計画では、気相反応とともに不均一反応についても、反応確率を測定する実験を今年度および次年度に行う予定であったが、テフロンバッグを用いたイソプレンのオゾン酸化反応の研究において、新たな化学過程を見いだすことができたため、こちらの研究を優先して行うこととした。次年度も、イソプレンのオゾン酸化反応における化学過程解明を重点的に行う予定である。
|