研究領域 | 東アジアにおけるエアロゾルの植物・人間系へのインパクト |
研究課題/領域番号 |
20120005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東野 達 京都大学, エネルギー科学研究所, 教授 (80135607)
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研究分担者 |
大原 利眞 独立行政法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, センター長 (80313930)
谷 晃 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (50240958)
南齋 規介 独立行政法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (80391134)
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キーワード | 越境汚染 / 大気化学輸送モデル / ソース・リセプタ関係 / 二次粒子 / BVOC / インベントリ / 産業連関分析 |
研究概要 |
わが国のBVOCインベントリ構築のために、簡易渦集積法により富士吉由市めカラマツ林、滋賀県南部のヒノキ林でモノテルペンフラックスの計測を行い、カラマツ林ではフラックスの変動要因と温度依存性を、ヒノキ林では夏秋の日変動を明らかにした。また、枝チャとバー法によりカラマツのモノテルペン放出速度は葉温にのみ依存することがわかった。さらに、キュベット法によりマレーシア固有の38樹種についてBVOC放出速度を測定し、12種からイソプレン放出が確認された。 東アジア4ヶ国および東南アジア5ヶ国をソースおよびリセプター領域として、排由インベントリ、気象モデルと大気化学輸送モデルにより、各領域における基準の粒子状物質(PM)濃度を求めた。次にソース領域における人為起源排出量を50%、100%削減した計算結果とあわせて、リセプター領域におけるソース領域の寄与率、PM濃度の感度を求めた。これらの結果から各国のPM濃度に関するSR(ソース・リセプター)マトリックスを作成した。PMのうち黒色炭素(BC)粒子についてみると、東アジアでは中国からの寄与がリセプター領域の濃度の40-80%と最大であったが、東南アジアでは自国の寄与が最大であった。また、中国における人為起源BC排出量と各リセプター領域における年平均地上濃度との間には、ほぼ線形関係が成立し、影響評価への基礎データが得られた。 日本の最終需要に起因する全球的な人為起源エアロゾル前駆物質の発生分布とその構造を解析するため、世界連結産業連関モデルを用いて、グローバルな誘発NO_x排出量の推計を行った。その結果、2005年の日本の国内最終需要に起因する国内外のNO_x発生量は3.8Mtでこのうち国外発生量が47%を占めた。さらに、その排出量の要因を6つのサプライチンブロックに分解して構造解析を行い、日本の中間需要への輸入と最終需要の直接輸入はNO_xの全球的な誘発において同等の影響を引き起こしたことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の骨格を成す3課題である、i)BVOCインベントリ構築のためのフラックス測定、は順調に推移しており、最終年度にわが国のインベントリ構築が可能との見通しを得ている。また、ii)PMのソース・リセプター解析も、濃度について国別のSRマトリックスを作成してはほぼ初期の目的を達成しつつあり、発生源別の詳細分析を残している。産業連関分析は、基本的方法の枠組みが完成し、エアロゾル前駆体、1次粒子発生源分析をほぼ終えて2次粒子分析を残すのみとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
BVOC放出速度推定の基礎データの取得と日本のインベントリ作成への適用、自然起源の寄与を入れた人為発生源からの2次粒子生成におけるSR関係の決定、SR関係を反映した人為発生源に対する産業連関分析を行う。健康影響の評価は他研究項目の進捗状況によるが、成果が遅れる場合は簡易モデルによる影響ポテンシャル評価を実施する。
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