計画研究
本研究は、人体の健康に影響があると考えられるPM_<2.5>粒子状物質や粒子状有機物(主にPAH)、重金属類を対象として、東シナ海沿岸に位置する長崎県福江島、沖縄本島辺戸岬および福岡県福岡市において地上観測を行い、東アジア起源のエアロゾルが国の都市域における大気汚染に対する影響の評価を目指している。これまで2009年および2010年の2回の春季、2009年10月(秋季)および2010年12月(冬季)と計4回の集中観測を実施した。福江島・辺戸・福岡において2009年4月~2010年に4月に測定されたPM_<2.5>濃度の月平均値はきわめて近い値であった。福岡と福江島の水平距離190kmは、東日本では東京都心部一長野市と同程度の距離スケールであり、九州北部のPM_<2.5>濃度を規定しているのは、明らかに都市・地点での大気汚染状況ではなく、長距離輸送により生じた広域的な汚染場の状況であることを示している。フィルター捕集されたPM_<2.5>中の炭素系粒子の濃度は、熱分離・光学補補正法による透過光補正-有機炭素(TOT-OC)濃度は福岡で福江の1.3~1.4倍程度の濃度となっており、都市大気汚染による付加分が明確に存在する。一方、透過光補正-元素状炭素(TOT-EC)濃度では両地点の差が小さくなる。OC中の有害成分のうち、2009年と2010年の春に福江島と福岡市で観測されたPAHs、ベンゾ【a】ピレン(BaP)、およびn-アルカンについては、福岡市における長距離輸送の寄与率の指標として福江島/福岡市の濃度比を調べたところ、福岡市で観測されるPAHs、BaP、およびn-アルカンのうち0.31~0.67の成分が長距離輸送に由来するものと推定される。一方、より有害性が指摘されるキノン類は、福岡で測定される濃度はほとんどが長距離輸送由来であると示唆された。福江島にけるレーザー蒸発イオン化質量分析計による測定では、個別粒子中に含まれるPAHsのスペクトルを捉えることに成功し、これら有害物質が他のどのような物質と内部混合した状態で運ばれてくるのかについての知見が得られ始めた。
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