計画研究
本研究は人体の健康に影響があると考えられるPM_<2.5>粒子状物質や粒子状有機物(主にPAH)、重金属類を対象として、わが国の風上域で地上観測を行い、東アジア起源のエアロゾルが国の都市域における大気汚染に対する影響の評価を目指している。本年度は、夏季の汚染状況を得るため、2011年8月に福岡,福江島,沖縄辺戸において集中観測を実施するとともに、A02P05班の航空機観測に対応して2012年3月に同3地点で集中観測を実施した。福岡では2010年3月よりハイボリューム,インパクタHVI_<2.5>を用いて日々のPM_<2.5>を通年採取しているが、その全量分析結果が2010年度分についてまとまった。年間を通じて、PM_<2.5>の最大寄与成分は硫酸塩(SO_^<2->,NH_4^+)および粒子状有機物であるが、日平均濃度40μg m^<-3以>上の高濃度日のみでみると土壌粒子(黄砂)の寄与割合も高まっていた。疫学研究班で使用される、国立環境研究所のMieライダーによる黄砂到来判定について地上観測結果からの検証を行った。長崎での非球形散乱係数と福岡でのPM_<2.5>中Al濃度の比較から、非球形散乱係数0.07 km-1を黄砂到来の指標とすることは妥当であることが確認できた。PAHsのエイジングによりローカル汚染と長距離輸送を判別する試みを行った。ローカル汚染の寄与率(1-Nag/Fuk)と各種マーカーの関係では、Ant/Phe(R^2=0.27)やPAH/アルカン(R^2=0.24)では弱い相関が見られた。これより、1-Nag/Fukの値がローカル汚染の寄与率の指標になることが示唆された。レーザーイオン化マススペクトルメータによる2010年の冬季および春季のデータより、福江島における有害金属である鉛成分(Pb^+)に注目して解析を行ったところ、冬季に鉛を含む質量スペクトル数の割合は約2.6%で、春季(4/13-4/29)に同様の観測を行った際の約2.4%とほぼ同様の値であった。
2: おおむね順調に進展している
九州北部地域における、わが国域外からのPM2.5成分および有害成分について、各季節における寄与の状況をほぼ明らかにできた。PAHsの国内都市起源と域外移流分に関しては、特にキノン類の大部分が域外移流起源であることを明らかにできた。疫学研究班に対するデータ提供も順調に進んでいる。
研究計画の最終年度にあたるH24年度は、これまで得られたデータをとりまとめ、外部発表や論文化を行うことに注力する。また、取得データに不足があった場合には、追加的に集中観測を行うこともあり得るが、比較的小規模なものに留める。さらに、これまで各地に配備した測定機器等の撤収作業を行う。
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