計画研究
本研究の目的は、越境大気汚染物質であるエアロゾルが樹木の成長や生理学的特性に与える影響を実験的に解明することである。その目的のためには、樹木の葉表面および内部におけるエアロゾルの吸収と吸着状態を、イメージング技術を駆使して可視化することが必要である。本年度は、人為的に曝露したエアロゾル、特に硫酸アンモニウム微粒子の可視化の方法を確立し、葉への吸着状態を解析することを目標とした。硫酸アンモニウム粒子を短期曝露した葉の表面上において、直径300-600nm程度の球形の微粒子が観察された。エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析の結果、これらの粒子から高いイオウのピークが検出された。一方、粒子以外の葉面からは高いSのピークが検出されなかった。硫酸アンモニウム粒子は葉面上において単独で分布しており、葉の向軸面および背軸面どちらにも観察された。また、ブラックカーボン粒子は葉面上の針状および棒状のワックスが密生する場所では沈着しにくいのに対して、硫酸アンモニウム粒子はワックスの疎密に関係なく様々な場所に沈着しており、硫酸アンモニウム粒子とブラックカーボンでは、葉の生理学的機能に与える影響が異なることが示唆された。本研究により、サブミクロンサイズの粒径をもつ硫酸アンモニウム粒子が樹木の葉面に沈着する状態を可視化することに成功した。硫酸アンモニウム粒子を1または2成長期間にわたって長期間曝露すると、短期曝露の粒子とは異なる多角形状で粒径も異なる粒子が葉面において観察された。これらの粒子についてEDXで元素分析を行ったところ、Sの高いピークが検出された。硫酸アンモニウム粒子は、長期間の曝露にさらされる間に大きく潮解した可能性が高い。曝露期間によって粒子の形状および粒径が異なることから、サブミクロンサイズの硫酸アンモニウム粒子の樹木への影響は曝露期間によって異なると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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