研究概要 |
東アジアの森林樹種に対するエアロゾルの影響とその樹種間差異を解明することを目的として、ブナ(Fagus crenata,3年生)、スダジイ(Castanopsis sieboldii,2年生)、スギ(Cryptomeria japonica,1年生)およびカラマツ(Larix kaempferi,1年生)の苗木に対するブラックカーボンの影響に関する実験的研究を行った。葉の表面におけるブラックカーボンの沈着状態を電界放出形走査電子顕微鏡で観察した結果、すべての樹種の葉表面に暴露由来のブラックカーボンの沈着が確認できた。2010年8月におけるブナ、スダジイ、カラマツおよびスギの光飽和条件下における純光合成速度、葉温および光-光合成曲線の初期勾配として表される光合成の光利用効率にブラックカーボン暴露の有意な影響は認められなかった。また、2010年8月におけるブナ、スダジイ、カラマツおよびスギの葉の光化学系IIの最大量子収率(F_v/F_m)およびブナとスジイの葉の分光特性に対するブラックカーボン暴露の有意な影響は認められなかった。2010年11月におけるブナ、スダジイ、カラマツおよびスギの個体乾重量にブラックカーボン暴露の有意な影響は認められなかった。2009年6月1日から2010年11月1日までの樹高の増加量と根元幹直径の増加量にブラックカーボン暴露の有意な影響は認められなかった。これらの結果から、2成長期間にわたるサブミクロンサイズのブラックカーボン暴露は、ブナ、スダジイ、カラマツおよびスギの成長や光合成などの生理機能などに影響を及ぼさないことが明らかになった。
|