計画研究
アジア大陸から越境輸送されるエアロゾル粒子が植物に及ぼす影響を明らかにするためには、平均粒子径が数百nm(サブミクロン)のエアロゾル粒子を用いた実験的研究を行う必要がある。しかしながら、現在の所、サブミクロンサイズのエアロゾル粒子が植物に及ぼす影響に関する研究は極めて限られており、植物の成長や生理機能などに対する長期的な影響は明らかにされていない。そこで、本研究では、ブナ、スダジイ、カラマツおよびスギの苗木に対するサブミクロンサイズの硫酸アンモニウム粒子の影響とその樹種間差異を解明することを目的とした。2011年4月に、鹿沼土を詰めた容量2Lのポットに1個体ずつ各樹種の苗木を植栽した。6月1日に、各樹種の苗木をエアロゾル暴露チャンバー内に配置し、硫酸アンモニウム粒子の暴露を行わない対照区と硫酸アンモニウム粒子の暴露を行う硫酸アンモニウム暴露区で育成した。樹木への硫酸アンモニウム粒子の暴露は、2011年6月3日~10月27日において、1日1回(30分間/日)、超音波力型粒子発生装置を用いた噴霧乾燥法によって行った。2011年10月におけるブナ、スダジイ、カラマツおよびスギの個体乾重量、樹高および根元幹直径に対する硫酸アンモニウム粒子の有意な影響は認められなかった。2011年7~10月におけるブナ、スダジイ、カラマツおよびスギの葉の光飽和条件下における純光合成速度、蒸散速度、水蒸気気孔拡散コンダクタンスおよび水蒸気飽差の上昇に対するgsの応答に対する硫酸アンモニウム粒子の有意な影響は認められなかった。スダジイの葉のエピクチクラワックス量は、硫酸アンモニウム粒子の暴露によって有意に低下した。スギの葉内硫酸イオン濃度は硫酸アンモニウム粒子の暴露によって有意に増加した。さらに、スギの葉内では全遊離アミノ酸濃度が硫酸アンモニウム粒子の暴露によって有意に増加した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、樹木に対する硫酸塩エアロゾル粒子の暴露を開始し、着実にデータを蓄積できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
現在の所、研究計画の変更や研究を遂行する上での問題点はないため、平成24年度も引き続き、樹木に対する硫酸塩エアロゾル粒子の暴露を継続し、着実にデータを蓄積する予定である。
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Aerosol and Air Quality Research
巻: (印刷中)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 50 ページ: 06GG10
10.1143/JJAP.50.06GG10
Journal of Aerosol Research Japan (Earozoru Kenkyu)
巻: 26 ページ: 277-285
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/jar/26.277(JOI)
http://www.tuat.ac.jp/~aerosol/