研究概要 |
本研究では,森林に対するエアロゾルの乾性沈着量の推定法による評価を基本として,実用的な評価方法を開発することを目的としている.森林では,キャノピーの多重構造や,森林環境における気象要素が林内への乾性沈着に大きな影響を及ぼすと考えられる.本研究では濃度勾配法,林内雨林外雨法,葉洗浄法,オープンパスFTIR分光法を用いて,乾性沈着の動態を把握し,定量化することを目的としている.平成22年度では,林内におけるSO_4^<2->の沈着量と気象要素の関係を解析により,実葉沈着量フラックスは,各高度における相対湿度と正の相関を示し,代理表面への沈着量フラックスは大気中の二酸化硫黄ガス濃度と正の相関があることが示された.表面状態の濡れ程度および二酸化硫黄ガス濃度が葉表面の硫黄酸化物の沈着に大きく影響していると予想された.また、森林樹冠による大気汚染物質のフィルター効果を検証したところ,ガス状のHNO_2とSO_2では高い効果が認められたが,粒子状物質のNO_3^-(p)とSO_4^<2->(p)では効果が低く,これらの物質の再飛散があることを示唆された.ブラックカーボン濃度は,樹冠高度が20mおよび森林の上空30mおよび25mにおいて,夕方(20時頃)に高くなる日変化を示した.濃度勾配法により,測定期間内の平均フラックス:0.18μgm^<-2>s^<-2>,沈着速度:20cm s^<-1>であった.オープンパスFTIR分光法により,地表から高度40mまでの大気中のN_2Oはほぼ均一に分布していることが示された.一方,CO_2やH_2Oは,CO_2やH_2Oは地表から10mの高さまで濃度勾配が見られ、付近での濃度が相対的に高くなっていることがわかった.今後はガス成分間,あるいはガスとエアロゾルの濃度分布の相関の観測等に応用を試みる計画である.
|