研究概要 |
本年度,厚労省より得られた死亡小票データを用いた予備解析を開始した.とはいえ,入手データを詳細に検討したところ,出版されている統計表の値と食い違う点が認められ,入手データに問題があることが疑われた.よって,今回の解析は,あくまでも予備的なものであり,後日厚労省から改訂版のデータを入手した後に同様の解析を行う. 札幌市,仙台市,東京23区,名古屋市,大阪市,福岡市,長崎市の7都市におけるSPM及び65歳以上死亡数の年次推移を観察し,ついで,各都市におけるSPM濃度と死亡数との関連を一般化加法モデルによって評価した.これは多変数の回帰分析の拡張で,直線以外の関連も扱うことができる.このとき,年次と日最高気温を制御した.自然3次スプラインという方法によって曲線回帰を行った. 全7都市で,1998年あたりから濃度低下が進んでいた.特に東京では規制を強めたことも関係して低下傾向が強い.しかし,福岡市と長崎市は,全体としては低下傾向のように見えるが,2005年以降でも増加局面を示す.このことは,大陸からの越境大気汚染の影響を伺わせる,札幌市も最近やや増加傾向が見られるが,その理由は明かでない. SPMと死亡との関連では,札幌市で直線的に濃度に従って死亡数が上昇しているように見えがが,東京と福岡市では,高濃度の日数が極端に少なく,そのために高濃度域では推定値が単調増加ではなかった.今後の解析を待たなければならないが,この理由の一つは,高濃度域のSPMには黄砂が含まれており,黄砂そのものの健康影響がそれほど大きくないことも関与している可能性がある.なお,仙台市,名古屋市,大阪市も同様の傾向を示した.
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