研究概要 |
本研究では、大気中の微小粒子・エアロゾルの健康影響について、免疫応答と気道上皮への影響に注目した実験的評価を行い、健康影響を規定する要因を絞り込むことを目的としている。 これまでに、大気中の微小粒子・エアロゾルに含有される多環芳香族炭化水素類の影響について検討を行い、化学物質によって標的となる細胞や反応性が異なることが明らかにした。このことから、今年度は、フェナントレンとナフタレンおよびその誘導体を評価対象とした。細胞は、アトピー素因を有するマウスの脾細胞と骨髄由来樹状細胞、ヒト気道上皮細胞を使用し、フェナントレンと9,10-フェナントレンキノン(PQ)、1,4-PQ、ナフタレンと1,2-ナフトキノン(NQ)、1,4-NQ、1,2-ジヒドロナフタレン(DN)、1,4-DNに曝露し、活性化マーカーの発現の変化を比較検討した。その結果、基本構造であるフェナントレンとナフタレンの活性は低く、化学物質の影響には、官能基の存在が大きく寄与すること、また、細胞種だけでなく、その分化・成熟過程により、化学物質に対する感受性が異なることが示唆された。いくつかの影響においては、9,10-PQよりも1,4-PQ、1,2-NQよりも1,4-NQ、1,2-DNよりも1,4-DNでより強い傾向がみられたことや1,2-NQと1,2-DN、1,4-NQと1,4-DNの作用強度が一部類似していたことから、官能基の配置によって作用機構が異なる可能性も考えられた。
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