研究領域 | 東アジアにおけるエアロゾルの植物・人間系へのインパクト |
研究課題/領域番号 |
20120014
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高野 裕久 京都大学, 工学研究科, 教授 (60281698)
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研究分担者 |
小池 英子 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (60353538)
柳澤 利枝 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部・生理室, 主任研究員 (70391167)
井上 健一郎 北里大学, 薬学部, 教授 (20373219)
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キーワード | 微小粒子 / 生体影響 / 免疫影響 / 呼吸器影響 |
研究概要 |
本研究では、大気中の微小粒子・エアロゾルの健康影響について、免疫応答と気道上皮への影響に注目した実験的評価を行い、健康影響を規定する要因を絞り込むことを目的としている。 これまでに、大気中の微小粒子・エアロゾルに含有される多環芳香族炭化水素類の影響について検討を行い、化学物質によって標的となる細胞や反応性が異なることが明らかにした。また、同じ基本構造を有するキノン体と水酸化体や異性体間でも影響が異なる可能性も見出している。 今年度は、ニトロ体およびアミノ体の影響の相違の有無を明らかにすることを目的とした。化学物質は、ナフタレンおよびピレンを基本骨格とするニトロ化合物やアミノ化合物を評価対象とし、免疫担当細胞(アトピー素因を有するNC/Ngaマウスの脾細胞と骨髄由来樹状細胞)とヒト気道上皮細胞(BEAS-2B株)に及ぼす影響について比較検討した。その結果、まずこれまでに、基本骨格の化学物質として検討したナフタレン(2環)とフェナントレン(3環)が、免疫担当細胞にも気道上皮細胞にも毒性および炎症に関わる明らかな作用を示さなかったのに対し、ピレン(4環)は、それらの修飾作用が一部観察された。また、ニトロ基、アミノ基による免疫応答と気道上皮への修飾作用が一部観察され、1-ニトロナフタレンと1-アミノナフタレンよりも、1-ニトロピレンと1-アミノピレンの影響が強いことも明らかにした。以上より、官能基の有無やその種類以外にも、ベンゼン環の数等、影響を規定する要因がある可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、微小粒子・エアロゾルの健康影響を、免疫応答と気道上皮への影響に注目し、実験的に評価し、成分等の相違による健康影響の相違を考察するとともに、健康影響を規定する要因の絞り込みに資すること、加えて、増悪メカニズムを分子レベルで解析し、その結果をバイオマーカーの同定や予防対策の確立に役立てることを目的としている。これまで、この目的に沿った研究計画を作成し、その計画を粛々と進行し、バイオマーカーの同定、成分による健康影響の相違の存在、健康影響規定要因の絞り込み、増悪メカニズムの解明等を遂行することができた。そのため、おおむね順調に進展していると自己点検、評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本新学術領域の分析班との連携をより密にし、同班による捕集粒子のデータを勘案し、免疫担当細胞および気道上皮細胞を用いて、化学構造や組成と影響との関連性について更に検討を進め、明らかにする。影響が観察された化学物質については、活性酸素生成や転写因子、シグナル伝達系等詳細なメカニズムについて検討を進める予定としている。
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