計画研究
「サンゴ礁学」における生態系の化学的素過程の研究において、20年度は「サンゴの育成に関わる光、水温、流速および化学成分(栄養塩とCO_2濃度)を制御できる装置を作成し(1)サンゴの白化と水温・光ストレスの関係、(2)サンゴの病気と病原菌に関する実験、(3)健全と病気のサンゴに関する窒素固定の違いに関する実験、(4)微量金属のサンゴの取り込み実験を行った。「マルチの化学共生の機構解明」を目標に研究し、新たな知見が得られた。サンゴ内に共生している褐虫藻は色素を持ち、海水温が上昇するとサンゴの外に逃げ出すことにより、サンゴは白化すると考えられている。水温28℃と32℃でサンゴを飼育し、実験前と終了後の海水とサンゴ内のペリジニンを測定した。その結果、実験前にペリジニンは6000ng/cm^2(サンゴの表面積)存在していたが、サンゴ体内のペリジニン量は28℃で5700ng/cm2、32℃で4300ng/cm2、海水中のペリジニン量は28℃で106ng/cm2、32℃で35ng/cm2と海水への放出量は1%にもならないことがわかった。むしろサンゴ体内でのペリジニン量が減少していることから、体内で褐虫藻が色素を失うことを示している。サンゴの病原菌について遺伝子解析により同定・検索を行い、病原菌として「パラコカス、ビブリオ等」を見つけた。病原菌がサンゴに病気を引き起こす可能性についてサンゴ飼育槽を用いて実験を行い、可能性を確かめた。健全なサンゴと病気のサンゴについての窒素固定量は3~5倍病気のサンゴが高いこともわかった。サンゴに生存しているシアノバクテリアが増殖したことを示している。微量金属元素は褐虫藻の生産の増殖にプラスであることを確認した。これらの結果はサンゴの共生は褐虫藻との関係だけでなく、バクテリアとシアノバクテリアを加えたマルチの共生系で成立していることを示している。
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