計画研究
琉球列島石垣島の白保サンゴ礁において定測線における調査を継続し、高温ストレス応答を評価した。高温ストレスに対する応答は、サンゴの種類によって異なっており、白化して大規模にへい死するが無性的成長による回復が著しい枝サンゴ、白化するがへい死には至らない塊状サンゴ、白化しにくいアオサンゴなどのグループに分かれる。1998年白化後には、この3グループとも5年で白化前の規模まで回復した。しかし、2004年以降、高温ストレスは小規模であるにも関わらず、枝サンゴの被度が大規模に減少してしまっており、高温ストレス以外の要因が関わっている可能性がある。酸性化応答評価のため、白保サンゴ礁では、二酸化炭素濃度が600-800ppmと増加し将来の高二酸化炭素環境を模擬している夜間の群集代謝を見積もったところ、6割のデータが溶解を示した。これは、堆積物の半分をしめる高Mgカルサイトが、溶解しているためである。高Mgカルサイトの飽和定数は、Mg量などによって異なるため、実験的に求められていないが,今後実験室とフィールドにおいてその溶解速度を求める必要がある。沖縄本島北西方の活火山の無人島、硫黄鳥島では、全島にわたり高い被度で造礁サンゴが分布している。一方、火山ガスが噴出して海水のpHが7.7程度と低下した海域では、局所的に造礁サンゴが分布せず、ソフトコーラルが密生している。pHの低下量は、今世紀に予想されている値とほぼ同じ規模であり、今世紀中に海洋酸性化によって造礁サンゴ群集がソフトコーラル群集にシフトする可能性を示唆する。サンゴ礁コアから採取されたサンゴ化石を種レベルまで同定して、今世紀と同規模の海面上昇速度であった後氷期の海面上昇に対するサンゴ地形・群集の応答を明らかにした。サンゴ礁礁縁(砕波帯)のミドリイシ類など特定のサンゴ群集が、サンゴ礁地形の維持にとって重要な役割をはたしていることが明らかになった。将来の海面上昇に対してサンゴ礁地形を維持するためには、礁縁部の特定種の維持・再生が必要であることが明らかになった。
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http://www.coralreefscience.jp/