研究領域 | サンゴ礁学-複合ストレス下の生態系と人の共生・共存未来戦略- |
研究課題/領域番号 |
20121007
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
灘岡 和夫 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 教授 (70164481)
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研究分担者 |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
渡邉 敦 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 助教 (00378001)
中野 義勝 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 技術専門職員 (40457669)
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キーワード | サンゴ礁 / 複合ストレス / 生態系モデル / 物質循環 / ストレス制御 / 炭酸系動態 / 数値シミュレーション / 非線形応答過程 |
研究概要 |
複合ストレス評価に関して、地下水を含む様々な陸源負荷や大気経由負荷についての現地観測を行い、対応した評価モデルの開発を進めた。さらに陸源負荷の生成・制御過程のモデル化に必要となる地域コミュニティの社会経済的な調査として、畜産に焦点を当てた調査を石垣島を中心に行い、同島での窒素ベースのマテリアルフロー構造を明らかにした。生態系応答モデルシステムの開発に関して、システムを構成する炭酸系動態モデルの開発と応用をさらに進めるとともに、栄養塩や有機物の物質循環ならびに低次生態系の時空間応答過程を解析対象としたモデル開発をA02班と連携して行った。このモデルは、詳細な流動場モデルをベースとして、水柱の生食連鎖と微生物循環および底生生物群集の代謝を組み込むことで構成されている。このモデルによる解析の結果、リーフ内の有機態動態がサンゴ粘液の生成と流動による移流効果に大きく支配されていること等を明らかにした。また、同モデルの一般化のために、マングローブ・海草藻場・サンゴ礁の連成生態系が顕著に発達した石垣島吹通川河口周辺海域において、流動・水質調査を夏期および冬期に実施した。さらに、サンゴ礁生態系短期応答モデルのキーとなる、複合ストレス下でのサンゴ群体内部の応答素過程を表す「内部モデル」をA02斑等と共同で開発を進めた。サンゴの光合成や石灰化の基本的な応答や海洋酸性化に対する石灰化の応答等がこのモデルにより良く再現できることが確認された。フィールド調査のハイライトとして、C01班やA02班と連携して流動付加制御機構付き新型チャンバーシステムの開発および運用を進め、サンゴの群集や砂地、アマモ場での代謝測定実験等を行った。また、サンゴ礁海域に存在する窒素化合物の中で量的には圧倒的大部分を占めている溶存態有機窒素の動態を明らかにするために、その窒素安定同位体比を利用する方法について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書ならびに交付申請書に記載している「研究目的」のうち最終年度に予定している「ローカルな土地利用形態やグローバルな温暖化ガス排出等に関する様々な複合ストレス生成将来シナリオのもとでのサンゴ礁生態系の応答を定量評価する」および生態系モデルのうちの長期応答モデルの開発を除き,ほぼ予定どおり研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
複合ストレス評価モデルやサンゴ礁物質循環・炭酸系動態モデルの高度化を図るとともに,それをベースとしたサンゴ礁生態系応答モデルの構築を進める.そのうちの短期応答モデルについては,サンゴ群体内部の応答素過程を表す内部モデルの開発をさらに進める.長期応答モデルについては複合ストレス下での群集間相互作用・競合過程等を考慮したモデル開発を行う.地域社会に関する社会経済調査分析等に基づいて,セクター別人口・経済動態モデル等による社会システムモデルの開発を行う.それを複合ストレス-生態系応答モデルとリンクさせた「統合モデル」を構築し,それに基づいて,サンゴ礁生態系が維持可能なストレスレベルの同定とそれを達成するための社会システムについて検討する.
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