研究領域 | ⼼脳限界のメカニズム解明とその突破 |
研究課題/領域番号 |
20H05716
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
古屋 晋一 上智大学, 上智大学, 准教授 (20509690)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 心理不安 / 限界突破 / エキスパート / 感覚運動統合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多様な状況で発揮する卓越したパフォーマンスの脳と心の限界規定要因を同定し、個々人に最適化された個別化トレーニングが限界突破を実現するか明らかにすることである。 まず,高難度な巧緻指運動制御が求められるピアノ演奏課題において,ピアニストのスキルの個人差を規定する要因を,大規模データ収録と機械学習を用いて同定した(Oku and Furuya under review).次に,当該技能を可視化するバイオフィードバックトレーニングを行い,特定の特徴量の可視化が技能の限界突破に寄与するエビデンスを得た.さらに,外骨格ロボットを用いた手指の受動トレーニングを行った結果,ピアニストの高度な演奏技能が向上することが明らかになった. 次に,アガリに関連する要因を明らかにするため,遅延聴覚フィードバックを用いた外乱提示をピアノ演奏中に行った結果,外乱によるパフォーマンスの攪乱が,心理緊張状態においてのみ認められた.さらに,当該遅延聴覚フィードバックを無視するトレーニングを短時間実施した結果,心理緊張に伴う聴覚フィードバック外乱によるパフォーマンスの攪乱が消失した.以上の結果から,心理緊張時には,感覚フィードバック制御におけるゲインが向上することが,パフォーマンスの低下と関連することが示唆された. また,心理緊張に伴う記憶の呼び出し機能の低下を調べるための実験系を確立し,実験デザインを確定するためのパイロット実験を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
演奏技能の個人差の評価のための実験や解析を行った他,トレーニングによる介入効果を評価する実験や統計解析も複数実施し,既に学術論文の出版をはじめとする成果も挙げているため,概ね順調に計画通りに研究が進行していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は個人差を考慮に入れた個別最適化トレーニングを,手指の感覚運動機能を対象に実施し,エキスパートの限界突破実現に寄与するエビデンスを集積する. さらに,アガリに伴う中枢神経系・自律神経系の異常の個人差を説明する要因の同定や,脳内機序を明らかにするための神経生理学実験,さらには因果関係を同定するための介入実験の実施に取り組む.
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