計画研究
DNA(Deep Numerical Analysis)気候学の開拓を目指し、全球非静力学モデルNICAMおよび大気海洋結合モデルNICOCOを信頼できる次世代全球気候モデルとして確立するため、本年度は主にスーパーコンピュータ「富岳」上においてプリプロセス、実行、およびポストプロセス環境を構築した。まず、既にあるHighResMIP(高解像度モデル比較プロジェクト)用の全球14kmメッシュ初期・境界条件を7kmメッシュ用に拡張し、これを用いて56~7kmメッシュの範囲でノード数を変えながらベンチマーク試験を実施した。その結果、ウィークスケーリング性能(ノードあたりのグリッド数を一定にしながらグリッド数・ノード数を増加させた時の実行時間)が56~7kmメッシュ実験においてほぼ完全に維持されることを確認した。これにより、理論上は3.5kmメッシュ気候実験についても現実的な時間で実施できる見通しが得られた。また、NICOCOの実行環境の準備を行い、短期間のテスト実験を行うとともに、フラックス調整といった結合実験の要素技術について調査を行った。並行して、NICAMの水平座標である正二十面体格子から解析に適した緯度経度格子へ変換するためのポストプロセスツールについて改良を行い、高速化を達成した。具体的には、通信アルゴリズムの変更、およびファイル出力の負荷分散(ファイル分割・ローカルディスク活用)により、全球14kmメッシュにおいてポストプロセス実行時間がシミュレーション実行時間を下回ることを確認した。以上の結果について、国際ワークショップであるCPM2021において招待講演として発表した。
2: おおむね順調に進展している
基本的に当初の研究実施計画通りに順調に進捗している。富岳においてポストプロセスの実行速度が想定よりも遅かったが、アルゴリズムの改良により実用に耐えうるレベルまで高速化できたことは予期していなかった結果である。
基本的に当初の計画通り研究を推進する予定である。今年度、富岳において良好なウィークスケーリング性能が確認できたため、当初想定していた7kmメッシュだけでなく「雲解像」といえる3.5kmメッシュ気候実験も視野に入れた研究開発を行っていく。懸念材料としては、本研究課題を取り巻く国際的な競争環境はここ数年で激化してきているが、コロナの影響により海外学会への参加や研究者の招へいといった国際研究交流に大きな制約が生じている。WCRP(World Climate Research Programme)のLHA(Lighthouse Activity)やESMO(Earth System Modelling and Observations)といった国際的な活動への関与をこれまで以上に意識することで、関連する国際動向について情報収集を強化していく。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Geoscientific Model Development
巻: 14 ページ: 795~820
10.5194/gmd-14-795-2021
Geophysical Research Letters
巻: 48 ページ: -
10.1029/2021GL094239