研究領域 | DNA気候学への挑戦 |
研究課題/領域番号 |
20H05730
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梶川 義幸 神戸大学, 都市安全研究センター, 特命教授 (20572431)
|
研究分担者 |
Chen YingWen 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (00637704)
横井 覚 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(大気海洋相互作用研究プログラム), 主任研究員 (40431902)
末松 環 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (40872544)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
|
キーワード | 気候システム / 階層構造 / 全球気候モデル / 再現性評価 |
研究実績の概要 |
学術的問いである「階層構造を踏まえた気候システムの理解に本質的な物理過程を明らかにする」ため、本研究課題は「気候モデル化した雲解像モデルNICAM」と「雲解像モデル化した気候モデルMIROC」のシミュレーション結果を観測データ等と共に比較解析を行い、必要不可欠な物理過程を明らかにすることで、適切な再現性能評価手法を確立する。令和2年度は、これまでのNICAMとMIROCのシミュレーション結果を解析するための計算機環境を整えつつ、第6次結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)のデータを最新の集中観測データや衛星データを参照しながら解析し、新たな再現性評価手法の開発に着手した。NICAMの数10日積分実験の解析からマッデン・ジュリアン振動(MJO)の再現性向上に有効な雲微物理及び海面フラックスのパラメータを特定した。一方で、NICAM-AMIP実験(Kodama et al. 2012)やNICAM-highResMIP実験などの長期積分実験の結果では、現実のMJOのような東進速度を持った雲システムが再現されず、雲微物理設定によって再現される雲システムに系統的な差が現れることを示した。対流圏上層雲の解析では、上層雲の有無の判別に関わる氷物質(雲氷・雪・霰)の道程を行い、NICAMにおける温暖化時の応答として上層雲の増加(面積の広がり)を示した。NICAMの結果は、これまでの大気大循環モデル(GCM)で示された熱帯域で上層雲の面積が狭くなる傾向と異なることから、上層雲の変化とそれにともなう放射収支の不確実性の存在を明らかにした。また、NICAMの高時間分解の実験データを解析し、西部太平洋・海洋性大陸における降水日変化の再現性能の評価手法・指標の設計についても検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度はコロナ禍による移動の制限や、不正アクセス判明による海洋研究開発機構とのデータのやり取りが困難ではあったが、本研究課題の開始から半年間という限られた時間の中、計算機サーバーを主体とする研究環境の構築、及び、これまでのNICAMとMIROCのシミュレーション結果を用いた解析を行い、MJOや上層雲に対する新たな物理過程や不確実性を明らかにするなど概ね順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、NICAM-AMIP実験、NICAM-highResMIP実験データとMIROCのCMIP6データの解析を進め気候実験における、季節変化・季節内振動・上層雲・降水日変化の再現性を定量的に評価し、再現性評価指標のプロトタイプを作成する。季節内変動(MJO)については、異なる雲微物理パラメータ設定で計算されたNICAM高解像度実験の結果の解析も行い雲システムの系統的な差異を説明する。上層雲解析においては、MIROCとNICAMに差が生じた物理過程を明らかにする。季節進行や年々変動の観点からはアジアモンスーン域における大気海洋相互作用に着目し、NICAMとMIROCの定性的な差異を明らかにし、再現性評価に繋げる。
|