研究領域 | DNA気候学への挑戦 |
研究課題/領域番号 |
20H05731
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
升本 順夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60222436)
|
研究分担者 |
河合 佑太 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (50836434)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
|
キーワード | 高解像度大気海洋結合気候モデル / 不連続ガラーキン法 / 汎惑星流体モデル / 3次元放射対流平衡 / 雲の組織化 / スーパーパラメタリゼーション |
研究実績の概要 |
新たな高精度流体離散化手法の基礎研究とそれを用いた汎惑星流体モデルの構築および新たな物理過程と数理的手法を取り入れた要素モデルの構築のためのセットアップと初期解析を行った。 高精度流体離散化手法の研究においては、O(10-100)mの格子幅による地球大気のラージエディシミュレーション(LES)を念頭にして、不連続ガラーキン法(DGM)を用いた高精度大気力学コアの開発を行っている。DGMの数値的振る舞いを調べるために、nodal DGMに基づく、乾燥大気の領域LES モデルを構築し、その妥当性を検証した。その結果、三次元風速の変動エネルギー分布において現実的な -5/3 乗則に沿うエネルギースペクトルが得られることが示されるとともに、従来計算法による7-8次高精度計算結果と整合する結果が得られることが確認された。 また、要素モデルの構築においては、雲解像大気モデルSCALE-RMを用いた三次元放射対流平衡実験を実施し、雲の組織化の成否と実験領域の大きさおよび固定海面水温との対応関係を調査した。特に、個別の雲同士を独立なプロセスとして捉える描像の構築に着手した。また、平衡統計力学の理論を援用することにより、積雲強度の頻度分布がカノニカル分布とよく似た性質を示すことを確認した。 さらに、全球スケールから個々の対流スケールまでを効率的にシミュレートする手法であるスーパーパラメタリゼーションについて、独自の改良を行う準備段階として既存の手法の実装を進め、熱帯低気圧の数値実験を題材とした動作検証を行った。その結果、概ね期待通りの動作が得られ、実用的なスーパーパラメタリゼーションを実装・改良する準備が整った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高精度力学コアを有する汎惑星流体モデルの構築に関しては、当初の予定通り、従来の非静力学全球大気モデルの力学スキームにおける問題点を整理し、求められる離散精度や差分化手法を検討した。先行研究で指摘されている不連続ガラーキン法の有用性を調査するための実験も実施することができ、新たな離散手法に関する知見を蓄積した。 新要素モデルの構築においても、当初の計画通り、雲の組織化に関する数理モデルの構築に際して、気体分子の平衡統計力学の考え方を取り入れることで個別の雲同士の相互作用を考慮した実験を行った。その結果を用いて、積雲群と環境場とのフィードバックの定式化の検討を進めた。また、多重尺度法を用いたマルチスケールモデリングの手法を積雲対流のスーパーパラメタリゼーションに導入したモデルの検証実験を行った。熱帯低気圧の発達速度が過小であるという課題はあるものの、ほぼ期待通りの結果が得られている。さらに、親モデルと子モデル間の物理的な整合性を担保しつつ、現実的な性能で計算可能な実装方法を検討し、次のステップへの準備を行なっている。 従って、研究はおおむね順調に進んでいると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえ、高精度力学コアを有する汎惑星流体モデルの構築に関しては、今後もDGMを用いた高精度大気力学コアを有する全球モデルの開発を進める。また、新要素モデルの構築では、新たな物理過程と数理的手法を取り入れた雲の組織化に関するモデルの構築と結果の解析を進める。さらに、実用的なスーパーパラメタリゼーションをモデルに実装し、これを用いた計算結果の解析を進める。
|