研究領域 | 高分子材料と高分子鎖の精密分解科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05735
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
沼田 圭司 京都大学, 工学研究科, 教授 (40584529)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 高分子精密分解 / 環境毒性 / 細胞毒性 |
研究実績の概要 |
高分子材料の分解を研究するに際して、ポリオレフィンなどと同様に結晶性を有し、階層構造を形成する高分子を第一のモデル高分子材料として検討した。化学合成の簡便性や分子鎖の修飾性なども考慮して、生分解性が幅広く研究されている結晶性ポリエステルをモデル高分子の一つとした。非晶性の高分子としては、天然ゴムおよび合成ゴムからモデル高分子を二種類選んだ。これは、タイヤをはじめとしたゴム材料の分解物(摩耗粉や抗酸化剤などの添加物)が世界的に注目されており、その周辺研究をすることで産業的にも重要な知見を導けると考えたためである。上記のモデル高分子に加えて、易分解性の高分子素材を複数用意し、比較試料として用いている。いくつかの研究結果から、分解物の分子量が環境毒性および細胞毒性に影響がある可能性が高く、対応するサンプルを複数用意した。また、環境毒性を評価するためのモデル動物としてオオミジンコを飼育培養できる環境と試験環境を、対応する人材とともに整備した。オオミジンコに加えて、さらにもう一種のモデル動物も予定しており、2年度目の早い時期に試験できるように調整中である。これらの環境毒性試験に加えて、PC-12神経細胞などの動物細胞などへの細胞毒性も含めて評価できる系を立ち上げた。生物酸素要求量(BOD)測定に加えて、分解産物が生物に取り込まれた際の代謝過程を、同位体を用いて評価する系も確立できた。この解析プラットフォームにより、高分子分解物の評価を多面的に実施できる環境を構築できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究で用いる高分子の設計や評価対象となる化学構造を確定すると共に、当初、2年度目までに確立する予定であった環境毒性試験など、必要不可欠な試験方法の確立が完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
分解産物の物理化学的解析と生物アッセイを組み合わせることで、生物への毒性を生じる形態を明らかにする。分解産物の解析は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)などを用いた形態観察、広角X線散乱による結晶性および構造評価、赤外分光による二次構造や表面構造解析、質量分析やゲル浸透クロマトグラフィによる分子量および分子量分布評価を行う。粒径によっては、小角X線散乱や動的光散乱を併用する。生体への影響評価として、神経細胞(ラット副腎髄質褐色腫細胞 PC-12)を用いた、分解産物の毒性アッセイを行う。分解産物が自然環境へ与える影響として、オオミジンコに加えて、新たなモデル系を立ち上げる。分解速度や、分解産物の特性により、生物に与える影響を評価し、顕著に毒性が高い構造については、同位体ラベルや、蛍光ラベル、ラマンプローブによるラベルを用いることで、細胞内代謝の過程をラマン顕微鏡や、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)などにより追跡する。用いる高分子試料についても、分子量、親疎水性、化学構造などに着目した多様性を準備し、生体への影響評価を進める。
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