研究領域 | 重水素学:重水素が示す特性の理解と活用 |
研究課題/領域番号 |
20H05740
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中 寛史 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (70431517)
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研究分担者 |
金尾 英佑 京都大学, 薬学研究科, 助教 (40895166)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 重水素化 / 重水素 / アルコール / 重水素化医薬品 / イリジウム |
研究実績の概要 |
近年、医薬品の代謝部位に重水素を導入した重水素化医薬品が注目を集めている。この観点から特定の部位のみに重水素を導入した複雑な有機分子の効率的な合成法の開発は、有機合成化学における重要な研究課題となっている。医薬分子に含まれるヒドロキシ基α位は生体内で代謝を受けやすいため、重水素化の魅力的な標的部位である。これまでにも金属触媒を用いたヒドロキシ基α位選択的な重水素化反応が報告されてきたが、高度に官能基化された医薬分子に広く適用可能な手法は知られていなかった。 今回我々は、医薬分子のアルコールとして、ロサルタンをモデル基質として設定し、重水によってロサルタンに含まれるアルコール の C-H 結合を C-D 結合へと直接する手法を探索した。その結果、有効な重水素化法を見出した。検討の結果、藤田らによって開発されたアルコールの脱水素化触媒である、ジピリドナート配位子が導入されたイリジウム触媒を用いることで、重水を重水素源とするヒドロキシ基α位の重水素化が選択的に進行することを見出した。本触媒系は複数の医薬分子や天然物を含む幅広いアルコールに対して適用可能であった。一級アルコールと二級アルコールの重水素化は、それぞれ微塩基性と中性条件で効率的に進行した。また反応機構解析、速度論実験および量子化学計算により、想定される反応機構を提唱した。さらに本反応で合成した重水素化ロサルタンの代謝実験により、ヒドロキシ基α位の重水素化がロサルタンの代謝安定性の向上に有効であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたアルコールα位の重水素化反応の開発をほぼ完了し、本反応で重水素化した医薬分子の代謝安定性を評価することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
イリジウム触媒を用いたアルコールα位の重水素化については論文化する。 また、重水素化した有機分子触媒を合成し、その反応性を評価する。
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