研究領域 | 重水素学:重水素が示す特性の理解と活用 |
研究課題/領域番号 |
20H05741
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
前川 京子 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (70270626)
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研究分担者 |
安達 基泰 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 上席研究員 (60293958)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 速度論的同位体効果 / 薬物代謝酵素 / 重水素医薬品 |
研究実績の概要 |
本研究では、領域内の研究者が合成した選択的重水素化医薬品を用いて、酵素反応速度論的解析により、P450 KIEを定量的に評価すると共に、構造解析等に基づくP450と医薬品との結合様式から、KIEの機序を解明することを目的としている。 本年度は、領域内の研究者から供与されたロサルタン、ワルファリン、フルルビプロフェンを対象に、CYP2C9代謝におけるKIEの測定を開始した。アルコール性水酸基のα水素を重水素化したロサルタンを用いて、CYP2C9によるE-3179(アルデヒド体)、及びE-3174(カルボン酸体)への逐次代謝の一次KIEをNon-competitive intermolecular法により評価した。重水素体を基質として用いた場合、軽水素体を用いた場合と比較して最終生成物であるE-3174の生成速度が約15%に低下し、大きなKIEを有することが示唆された。さらに、本逐次反応において、抗炎症作用を有するとされるE-3179と降圧作用を示すE-3174の生成量比が重水素化により変化する可能性が示された。 芳香環の水素を全て重水素化したワルファリンは、metabolic switchを起こすことなく、CYP2C9による7位水酸化反応の速度を低下させた。重水素化フルルビプロフェンに関しては、R体、S体を分離して定量するためのキラルカラムを用いた分析法の構築を開始した。 内在性代謝物の重水素化によるKIEを評価するため、遺伝性痙性対麻痺56の原因タンパク質であるCYP2U1の発現、精製、内在性基質の探索を開始した。 精製CYP2C9と重水素化ロサルタンの相互作用様式を等温滴定型カロリメトリーにより評価するため、測定条件の検討を行った。今度、重水素ロサルタンと軽水素ロサルタンで、CYP2C9に対する解離定数に違いがあるか否かを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに重水素化医薬品4種についてKIEの測定に着手すると共に、P450と重水素化医薬品の相互作用解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
派遣職員の雇用を継続し、酵素反応条件の最適化や質量分析計による代謝物測定系の構築を加速する。
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