研究領域 | 仮想人体構築学チップ上に再現した臓器からみる全身代謝の分子ネットワーク |
研究課題/領域番号 |
20H05744
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
福田 淳二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80431675)
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研究分担者 |
遠山 周吾 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90528192)
大久保 佑亮 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 主任研究官 (80596247)
西川 昌輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40843149)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 組織培養 / チップデバイス / Body on a chip |
研究実績の概要 |
領域全体の目的は、分子ネットワークレベルの「仮想生体」を構築することである。特に、上位階層である個体応答の理解のためには、個別臓器の格段の生理学性向上と、血管系を模した灌流回路で個別臓器を連結することで、個体システムの持つ非線形性 (頑強性や脆弱性) の観測が必要である。そこで、本計画研究では、細胞の自己組織化(オルガノイド培養)を用いて、高い生理学性を備えた個別臓器オルガノイドをチップ上に構築することを目的としている。例えば、薬物・毒物・食事などの暴露・吸収に関わる臓器(小腸、皮膚、肺など)を層状オルガノイドとして、代謝や体内動態に関与する臓器(肝、腎など)および暴露され障害等が生じる臓器(心、神経など)を球状オルガノイドとして構築する。 研究計画書では、研究初年度は、臓器を連結することを想定した上で、個別臓器のオルガノイドをチップデバイス上に構築するという目標を記載した。実際、マイクロ流路で連結された3つの培養チャンバを備えたチップデバイスを作製し、両端の2つのチャンバで肝細胞と心筋細胞に球状組織を形成させ、残る1つのチャンバには膜上に腸上皮細胞の層状組織を形成させた。このデバイスをシーソー型ステージに搭載し、培養液を送液しながら培養できることを示した。このシステムでは、チューブの接続などが不要であり、本研究領域に参加する研究者らが容易に利用可能である。各臓器モジュールの検証として、チップデバイス上に形成させたiPS細胞由来心筋細胞スフェロイドの遺伝子発現解析やモーションキャプチャによる拍動解析をおこない、その特徴を捉えることに成功した。また、腸上皮細胞層を通過可能な薬剤と通過しない薬剤を細胞層の上部に添加し、その透過性の違いが2種類目の細胞に及ぼす影響を本チップデバイスを用いることで評価可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載したチップデバイスを開発し、これを用いて個別臓器モデルの機能を評価した。初年度に達成すべき項目は満たしていることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発したチップデバイスを用いた培養技術を基盤として、個別臓器モデルに求められる生理学機能を明らかにした上でさらに高度化する。特に、各臓器モジュールの検証では、チップ上の細胞内代謝を変動させうる臓器間相互作用に関わるメッセージ物質(成長因子、シグナル物質、miRNA、エクソソームなど)の刺激を与え、代謝応答を時系列としてサンプリングする。これにより、各臓器モジュールが生理的な機能の一部を備えていることを示す。さらに具体的な臓器間連携には、モデル薬物の腸吸収や肝代謝、心筋傷害性などを評価し、高い生理学機能を備えることを実証する。
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