計画研究
ヒト個体応答を構成論的に再現・理解するため,杉浦が開発した圧力駆動型OrganS-on-a-chipや,研究協力者の木村啓志(東海大学)の開発したスターラー駆動型OrganS-on-a-chipを用いて,A02班の開発する薬物動態関連臓器(腸・肝・腎・心臓)モデルのうち,腸と肝および肝と腎の組み合わせについて,共培養およびそれぞれの臓器の単培養実験を行った.酒井は,荒川と共にスターラー駆動型チップを用いて,ヒトiPS細胞由来腸管とキメラマウスを用いたヒト肝細胞との灌流共培養を行い,共培養による肝の薬物代謝活性の向上は,灌流に加え酸素直接供給時により顕著となることを確かめた.特に肝について網羅的な発現解析を行い,単独培養時と比較して,ステロイド代謝,薬物代謝,細胞付着,マトリックス産生等のパスウェイが上位10位以内にリストされた.現在,特に薬物代謝に絞って,文献検索および仮説検証のための多様な投与実験を実施中である.杉浦は,ヒトの薬物動態プロファイルの達成のために必要なOrganS-on-a-chipの設計を,彼らが開発ししてきている圧力駆動型デバイスを用いて検討を行った.その結果,腸―肝連結培養系の肝細胞の細胞当たりの代謝活性の向上と、細胞数/培養液体積比の向上が重要であることをシミュレーションにて確認し,特にデバイス内肝細胞の高密度化・三次元化を進め,有望な手法を複数得た.荒川は腎肝相互作用を探索するため、胆管結紮マウスを作成し、種々の薬物の腎臓動態の変化を調べ,抗がん薬等の薬剤の腎蓄積が見られ,その原因が肝クリアランスの低下によるものとの結論を得ている.このことは,肝障害時の肝クリアランスの変化が,これらの薬剤の腎毒性発現に大きく影響していることをしめす結果となった.
2: おおむね順調に進展している
コロナのため,一部,培養用や解析用の輸入試薬の入手が遅れたため,一部の実験について,2022年度に繰り越して実施したが,その後は入手が順調に進み,当初の研究系アックを達成することができている.
この間,それらの試薬の入手は徐々に解消してきている.最終年度においては,担当の学生数を増やすなどで,遅れを取り戻し,当初計画である臓器間相互作用のメカニズム解明を概要でも達成したい.よって,研究計画自体には変更の必要はない.
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
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