研究領域 | 微気象制御学:微気象の調和的予測と能動的観測の融合による自律制御型社会基盤の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05754
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡邉 智昭 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70772292)
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研究分担者 |
長田 孝二 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50274501)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 微気象 / 流体工学 / Hot Air Recirculation / プラント / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
大型プラント内の列をなした熱交換器において、高温排熱気塊が風下側の熱交換器や各種装置に吸い込まれる事により装置の性能低下を引き起こすHot Air Recirculation(HAR)と呼ばれる現象が問題になっている。微気象情報を基にHAR現象を予測し各プラント運用を最適化することにより、HAR現象に起因するプラント運用効率の低下を防ぐことができると期待される。HAR発生メカニズムと支配パラメータを解明することを目的として、排熱源をモデル化した流れの直接数値計算(DNS)およびラージエディシミュレーション(LES)を実施した。まず、三次元排熱源構造物を通過する流れのDNSおよびLESの計算コードを構築した。本計算コードは有限差分法を用いたものであり、物体は埋込境界法により取り扱われる。計算コードはMPIにより並列化されており、スーパーコンピュータを用いた大規模数値計算が可能である。計算コードの検証のため、丘陵地形を過ぎる安定密度成層流れの数値計算を行った。丘陵上の乱流統計量が水槽実験結果とよく一致し、本計算コードが物体近傍の乱流現象の解析に有効であることを確認した。また、プラントにおける排熱を模擬した流れとして、噴流による熱拡散現象を対象とした数値計算を行った。流れ場から活発な熱拡散を引き起こす乱流領域を抽出し統計解析するデータ処理コードを構築した。数値計算結果を過去に行われた仮想プラント近傍の流れのシミュレーション結果と比較してHAR発生要因について考察した。次年度以降実施するプラントでの風況観測に向けた打合せを行い、観測に必要な機器を導入し準備を進めた。また、プラントの微気象予測に向けて、観測対象プラントを模擬した仮想プラントの電子データを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算コードの構築が完了し、プラントにおける排熱を模擬した流れの数値シミュレーションを開始することができた。構築したコードが建物などの物体周りの流れの数値計算へ適用可能であることが、丘陵地形を過ぎる安定密度成層流れの数値計算により確認された。また、流れ場から活発な熱拡散を引き起こす乱流領域を抽出し解析する手法についての論文がPhysics of Fluidsに掲載され、次年度以降実施する数値シミュレーションデータの解析準備が整った。また、プラントでの風況観測に向けた準備も順調に進んでいる。こうした本研究課題の取組・成果について「微気象制御学」領域シンポジウムや国内外の学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に構築した計算コードにより横風中に高温流体を噴出する流れのDNS(Direct Numerical Simulation)およびLES(Large Eddy Simulation)を実施する.計算条件を実プラントにおける過去の観測結果をもとに複数選定する。様々なパラメータに対する計算結果をプラント近傍の流れのシミュレーション結果や観測結果と比較し、HAR現象の発生条件を明らかにする。調和的予測班のMSSG微気象シミュレーション技術によるHAR現象の予測精度について検討する。また,DNSおよびLESによりHAR現象を引き起こす熱拡散の空間・時間スケールを求め、HAR現象の予測に必要な微気象情報の時空間スケールを同定することを目指す。これらの数値計算により予測されるHAR発生要因について検証するため、実プラントにおいて風況計測を行う。
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