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2020 年度 実績報告書

光熱変換を利用した細胞操作技術の開発

計画研究

研究領域生体分子工学と低物理エネルギーロジスティクスの融合による次世代非侵襲深部生体操作
研究課題/領域番号 20H05757
研究機関京都大学

研究代表者

今村 博臣  京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20422545)

研究期間 (年度) 2020-10-02 – 2023-03-31
キーワード色素タンパク質
研究実績の概要

色素タンパク質が実際にナノサイズの分子ヒーターとして利用可能かどうかを検証するため、赤色蛍光タンパク質由来の色素タンパク質であるShadowR、および近赤外蛍光タンパク質であるmiRFP720を青色蛍光タンパク質Siriusと融合させた様々なコンストラクトを作製した。ShadowRは蛍光タンパク質由来であるが量子収率がほぼゼロであり、miRFP720も0.1以下の比較的低い量子収率をもつ。一方、Siriusは温度に対して量子収率が大きく変化することが知られている。ShadowRやmiRFP720から発せられた熱がSiriusに伝わった場合、Siriusの蛍光強度が変化すると期待される。次に、Siriusの蛍光をイメージングしながら、色素タンパク質が吸収する波長のレーザーを局所的に照射するための顕微鏡システムを構築した。C末端11残基を削ったSiriusとN末端8残基を削ったShadowRを融合させたタンパク質を精製してポリアクリルアミドゲルに包埋し、上記の顕微鏡システムを用いてShadowRの吸収ピーク近傍の594 nmのレーザーを照射したところ、明らかなSiriusの蛍光強度の減少が観察された。このことは、色素タンパク質に光を照射した際に光熱変換によって生じる熱によって、近傍のタンパク質を温めることが可能であることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナウイルス感染症の影響で、顕微鏡システムの納品が想定より大きく遅れたため、タンパク質ヒーターの性能検証が遅れた。また、miRFP720などのビリベルジン結合タンパク質を大腸菌で発現させるための実験系の構築に時間がかかったため、miRFP720の分子ヒーターとしての検証がまだ進められていない。

今後の研究の推進方策

【実施計画1】 タンパク質ヒーターの性能の検証:前年度から引き続き、色素タンパク質に光を照射した際に、融合したタンパク質の温度がどの程度上昇するかを検証する。色素タンパク質に温度感受性の高い蛍光タンパク質であるSiriusを融合させて細胞内に発現させ、色素タンパク質が吸収する光を照射しながら同時にSiriusのシグナル変化を測定することにより、色素タンパク質に融合したタンパク質の温度を上昇させるために必要な光の強さを検証する。色素タンパク質としては、モル吸光係数が高く量子収率が極めて低い蛍光タンパク質であるmiRFP720およびShadowRのほか、下記の実験計画2で開発する色素タンパク質を利用する。
【実施計画2】 指向性進化による新規高性能タンパク質ヒーターの創出:前年度から引き続き、光を高効率で熱に変換する新規色素タンパク質を創出する。mCardinalなどの遠赤色領域に吸収を持つGFPファミリー蛍光タンパク質、およびmiRFP720などビリベルジンを蛍光団として持つ近赤外蛍光タンパク質のcDNAをテンプレートとしてランダムPCRをおこない、変異が入ったcDNAのライブラリを得る。形質転換した大腸菌の蛍光と吸収を評価する。強い色を有するにも関わらず蛍光が弱いクローンを培養してcDNAおよび蛍光タンパク質を得る。精製した蛍光タンパク質については分光特性を確認する。得られたcDNAをテンプレートとして再びランダムPCRをおこなうサイクルを繰り返す。
【実施計画3】 光熱変換を利用した細胞操作ツールの開発:色素タンパク質を熱感受性イオンチャネルであるTRPVに融合させて細胞内に発現させる。同時にカルシウムバイオセンサーも細胞内に発現させる。カルシウムイメージングをおこないながら、色素タンパク質に光照射をおこない、光熱変換を介したイオンチャネルの制御を試みる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Shear stress activates mitochondrial oxidative phosphorylation by reducing plasma membrane cholesterol in vascular endothelial cells2020

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Kimiko、Nogimori Yoshitsugu、Imamura Hiromi、Ando Joji
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 117 ページ: 33660~33667

    • DOI

      10.1073/pnas.2014029117

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Single-cell dynamics of pannexin-1-facilitated programmed ATP loss during apoptosis2020

    • 著者名/発表者名
      Imamura Hiromi、Sakamoto Shuichiro、Yoshida Tomoki、Matsui Yusuke、Penuela Silvia、Laird Dale W、Mizukami Shin、Kikuchi Kazuya、Kakizuka Akira
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 9 ページ: e61960

    • DOI

      10.7554/eLife.61960

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Spatiotemporal ATP Dynamics during AKI Predict Renal Prognosis2020

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Shinya、Yamamoto Masamichi、Nakamura Jin、Mii Akiko、Yamamoto Shigenori、Takahashi Masahiro、Kaneko Keiichi、Uchino Eiichiro、Sato Yuki、Fukuma Shingo、Imamura Hiromi、Matsuda Michiyuki、Yanagita Motoko
    • 雑誌名

      Journal of the American Society of Nephrology

      巻: 31 ページ: 2855~2869

    • DOI

      10.1681/ASN.2020050580

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Intracellular ATP levels in mouse cortical excitatory neurons varies with sleep?wake states2020

    • 著者名/発表者名
      Natsubori Akiyo、Tsunematsu Tomomi、Karashima Akihiro、Imamura Hiromi、Kabe Naoya、Trevisiol Andrea、Hirrlinger Johannes、Kodama Tohru、Sanagi Tomomi、Masamoto Kazuto、Takata Norio、Nave Klaus-Armin、Matsui Ko、Tanaka Kenji F.、Honda Makoto
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 3 ページ: 491

    • DOI

      10.1038/s42003-020-01215-6

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] アポトーシスにおいてパネキシン1によって駆動されるプログラムされたATP減少の単一細胞イメージング2020

    • 著者名/発表者名
      今村博臣
    • 学会等名
      光塾2020
  • [学会発表] 単一細胞ATP濃度イメージングによって明らかにされたアポトーシス時の細胞内ATP減少におけるパネキシン1の役割2020

    • 著者名/発表者名
      今村博臣、坂本修一朗、垣塚彰
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会 第46回討論会

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公開日: 2023-12-25  

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