研究領域 | 生体分子工学と低物理エネルギーロジスティクスの融合による次世代非侵襲深部生体操作 |
研究課題/領域番号 |
20H05759
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中川 桂一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (00737926)
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研究分担者 |
関野 正樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20401036)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 音波刺激 / 磁気刺激 / 光刺激 / オプトジェネティクス |
研究実績の概要 |
A01班が開発する光熱変換分子,A02班が開発する超音波応答分子,磁場応答分子,それぞれのレシーバ分子の機能を引き出すため,A03班では生体深部の目的部位に所望の物理エネルギー/物理場を届ける低物理エネルギーロジスティクス法の創成を目的とし,研究開発を進めている.音波刺激システムについては,光-音変換に基づく独自の音波生成法の開発を進めている.2021年度までに,パルスレーザを用いて駆動した音波にて細胞を刺激し,カルシウムイメージングにて細胞応答を計測するシステムを開発した.ナノ秒レーザを吸収体に照射し,パルス音波を発生させる.その際,発生した熱と気泡を除去するための還流デバイスも開発した.開発したデバイスで発生した音波は瞬時周波数では6MHzほどであり,レーザのパルスエネルギを調整することで,発生する音波の圧力も調整できることを確認した.また,細胞の応答としてカルシウムイメージングを行えるよう,自作の蛍光顕微鏡を組み込んだシステムを開発した.観察系は音波刺激と同期している.音波照射の結果,細胞の応答が確認できたが,応答の再現性が乏しく,実験系の改良が必要である.磁気刺激については,対象部位に所望の磁場を生成するための解析法を確立し,生成したい磁気並進力から,必要な磁場を求められることを示した.かつ,3Dプリンタを用いてコイルを試作し,合わせてパルス電源の製作を行い,強度1Tの磁場が出力できることを確認した.加えて,細胞刺激のために,微小領域に磁場を発生させる時期ピンセットも作成した.評価実験として,ゲル中に磁気粒子を分散させ,磁気ピンセットによりビーズの運動を制御できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他の計画研究班で開発した分子の利用を開始し,領域としても順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきたシステムの改良を進める.昨年度,圧力波の強度の向上と実験系の簡略化を目的に赤外パルスを用いた光学システムを導入しており,その有用性の検証を圧力プロファイルの可視化により引き続き行う.さらに,A02班で開発された物理刺激に応答するチャネルが導入された細胞に対し音波を照射し,チャネル導入の有無での比較や,音響パラメータの違いによる応答の差異を解析することで,メカニズムの探究と刺激の最適化を試みる.磁気刺激についても,引き続きシステムの開発を進める.これまでに生成したい磁場分布に対するコイルの設計理論の構築を進めてきた.3Dプリンタを用いたコイルの試作やパルス電源の製作も行い,十分な強度の磁場が得られることもわかった.さらに,in vitroでの細胞刺激で確実に検証を行うという観点から,磁気ピンセットも開発し,磁気ビーズを用いた動作確認も完了した.これらのシステムを用い,A02班で開発した磁気に応答する細胞に対する刺激実験を中川グループとともに行うことで,磁場に応答する細胞の制御の可能性を検証する.最後に,音波と磁場の同時負荷による複数の物理エネルギーを作用させた際の細胞応答を評価し,より自由な分子・生体操作の可能性を模索する.
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