研究領域 | 霊長類発生学研究の基盤構築 |
研究課題/領域番号 |
20H05762
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高島 康弘 京都大学, iPS細胞研究所, 講師 (70469930)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮内膜細胞 / 子宮間質細胞 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
妊娠合併症の約15%は胎盤あるいは子宮内・胚体外組織に原因があるとされる。また10組に1組は不妊治療を行っていることも知られている。質の高い受精卵を子宮内に戻した場合ですら流産する場合は多く、胚のみならず子宮も含めた包括的な理解が重要である。しかしながら、ヒト生体内における着床は妊娠しているかも不明な時期であり、生体で研究することは困難である。本研究の目的は、ブラックボックスである霊長類の着床機構、脱落膜化機構、着床期以降の胚発生を試験管内で再構築し、分子メカニズム明らかにし、霊長類着床後発生学の基盤を構築することである。 今日まで着床期以降に関する研究はマウスが主であった。しかしヒトとマウスは、子宮の構造、ホルモン応答性等、差異があり、マウスの知見をヒトに応用することは必ずしも適切ではない。ヒトに近い非ヒト霊長類を用いて胚発生をサポートできる機能的な子宮内膜モデルを構築する。 本年度はカニクイザル三次元子宮内膜構造を試験管内で構築することを目標とし、研究を計画した。実際、カニクイザル子宮試料から子宮内膜間質細胞と子宮内膜上皮細胞オルガノイドを別々に培養し、維持・増殖させることに成功した。また標本を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カニクイザル三次元子宮内膜構造を試験管内で構築することを目標とし、研究を計画した。実際、カニクイザル子宮試料から子宮内膜間質細胞と子宮内膜上皮細胞オルガノイドを別々に培養し、維持・増殖させることに成功した。また標本を作製した。 おおむね計画通りに研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに子宮内膜オルガノイド・間質細胞の培養に成功しており、今後はカニクイザル子宮内膜上皮および間質の網羅的遺伝子発現解析を実施し、子宮内膜増殖期・子宮内膜分泌期・妊娠期の各ステージにおける遺伝子変化を解析する。また樹立した試験管内子宮内膜オルガノイド・間質細胞における遺伝子発現も解析し、primary細胞との遺伝子発現を比較解析する。樹立したオルガノイド・間質細胞がどの程度in vivoを反映しているのかを明らかにする。ヒトにおける子宮内膜上皮・間質の遺伝子発現と比較することで、ヒト・カニクイザルという同じ霊長類における種間での類似点・相違点を明らかにする。さらに下記を実施する。 1子宮内膜間質層の構築 着床は胚が母体子宮内膜に対合、接着、浸潤する現象であり、接着するのみではなく、胚が子宮間質内に潜り込み成立する。着床現象を試験管内で再現するためには200μm以上の厚みを持った子宮内膜間質層が必要であり、三次元培養に適した足場が必要である。子宮内膜間質細胞の三次元培養する培養系を立ち上げる。さらには、血管内皮細胞を共培養し、毛細血管網を有する子宮内膜間質層を構築する。 2三次元子宮内膜モデルの構築 三次元子宮内膜間質層上に子宮内膜上皮細胞を融合させ、機能的な上皮層を形成する。子宮内膜上皮細胞の共培養は、三次元子宮内膜上皮オルガノイドを1細胞にバラバラにすることから始める方法と新規に開発予定の2次元培養の両方からアプローチする。
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