実験動物の遺伝子改変技術は、遺伝子機能の解明、有用動物の作出、ヒト疾患の病態解明など、生物学、医学の発展に多大な貢献をしてきた。 本研究領域は、現状ブラックボックスであるヒトの着床後発生の解明のための基盤構築を目指しているが、ヒトにおける遺伝子改変は倫理的問題について議論が尽くされておら ず、ヒト胚を用いることは難しい。よって、この目的達成のためには非ヒト霊長類胚を用いた効率的な遺伝子改変技術の確立が必要不可欠である。 本研究では、従来法のモザイク性や低効率といった欠点を克服し、次世代型の霊長類遺伝子改変技術の基盤を構築することで領域で構築する試験管内胚発生モデルにおける機能実験を可能にすることを目的とした。 本年度も昨年度に引き続き、トランスジェニック動物におけるモザイク性の解消という目標の達成のために、トランスポゾンベクター法の改良を行った。 独自に構築したpiggyBac(PB)トランスポゾンによるトランスジェニック動物の作出法をカニクイザルに適用し、全身で複数の蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックカニクイザルの作出に成功した。今後の研究に活かすために、このサルについての詳細な表現型解析を行い、各組織におけるトランスジーンの発現状態を明らかにしたとともに、トランスジーンのゲノムへの挿入位置の同定も行った。 さらに、発現時期を制御可能な改変PBaseベクターおよび、PBaseの残存を視覚的に評価するための、蛍光タンパク質と改変PBaseとの融合タンパク質を搭載したベクターを用い、各種改変PBaseの活性と受精卵におけるその活性動態を評価、条件の最適化を行い、非モザイク動物を高率で作出できる条件を見出した。
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