研究領域 | 冬眠生物学~哺乳類の低代謝・低体温による生存戦略 |
研究課題/領域番号 |
20H05767
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
砂川 玄志郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (70710250)
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研究分担者 |
清成 寛 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40721048)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 休眠 / 冬眠 / 日内休眠 / 低温耐性 / 低代謝耐性 |
研究実績の概要 |
哺乳類には冬眠(数ヶ月)や日内休眠(数時間)などの休眠状態(能動的低代謝)となる種が存在する。休眠中は少ない酸素消費量でも生存可能な省エネ状態だが、その原理はほとんど分かっていない。本研究では冬眠様状態を誘導できるマウスを駆使し、省エネ機構の重要因子をあぶり出し、マウスやハムスターの遺伝子改変動物でin vivo/in vitroの代謝解析を通して省エネ機構の分子ネットワークを明らかにする。2021年度は昨年まで行ってきたQIHやFIT状態のマウスの臓器サンプリングに加えて、高温環境でQIHを誘導し低代謝だが体温低下がほとんどみられない動物から肝臓、腎臓、脳のサンプリングを行い、トランスクリプトーム解析を行った。これまでの解析結果と合わせることで、体温とは無関係に休眠という状態に依存して変化する遺伝子群(低代謝関連遺伝子群)を見出すことに成功した。これまでに明らかになっている研究成果や、冬眠動物を用いて得られている冬眠関連遺伝子と比較し、低代謝関連遺伝子の中で休眠に重要な遺伝子を推定する解析を進めている。in vitro休眠表現型解析に関しては、生体マウスから心臓などの初代培養を行い、複数日に渡って観察する系を確立しつつある。加えて、サンプリングした肝臓の代謝測定をフラックスアナライザーですすめている。マウスの冬眠様低代謝モデルで見出した省エネ制御分子の機能を、実際に冬眠するハムスターで検証するために、遺伝子改変ハムスターを作成する技術開発を引き続きすすめている。最後に、ハムスターの冬眠を誘導するための低温室(常時4度に固定・明暗コントロールLD=12:12時間)も完成し、ハムスターの冬眠誘導の実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
休眠動物の組織のオミックス解析を行い休眠省エネ制御分子を検索すること(目標1)は、順調に進んでいる。2021年度は環境温度が32度の飼育環境にてQIHを誘導し、肝臓、腎臓、脳の遺伝子発現解析を行った。これまでの成果と合わせることで、環境温度の影響をうけずに個体の代謝が低下したときに変化する遺伝子群を同定した。また、in vitro代謝解析・機能解析を用いて、休眠省エネ制御分子を同定(目標2)するために、フラックスアナライザーや培養温度可変倒立顕微鏡の中で培養できる初代培養系の確立を進めた。さらに、冬眠するシリアンハムスターを用いた省エネ制御分子の検証(目標3)のための、ハムスター実験環境の整備も順調に進み、ハムスターの冬眠誘導実験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
目標1で明らかにしてきた低代謝関連遺伝子群を用いて遺伝子改変マウスを作成し、すべての系統においてそのQIH表現型解析や絶食性休眠の表現型解析を行い、遺伝子と休眠表現型の因果関係を明らかにする。さらに、in vitro系で同遺伝子が代謝にどのような影響を及ぼすか代謝解析・機能解析を行う。さらに目標3を実現するための遺伝子改変ハムスターを作成を目指す。
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