2022年度は高温環境にてQIHを誘導した温かい冬眠状態の遺伝子発現解析から得られた体温とは無関係に休眠という状態に依存して変化する遺伝子群(低代謝関連遺伝子群)が実際に因果性を持って休眠の低代謝と関係していることを示すために遺伝子破壊を行ったマウスで表現型解析を行った。具体的には、Qrfp(cre/+)マウスの受精卵にCas9タンパクとgRNAを直接導入し、該当する遺伝子が破壊されたQrfp(cre/+)マウスを産出し、同マウスの視床下部にAAV-hSyn-DIO-hM3Dqを感染させることで、特定の遺伝子がKOされたQIH可能なマウスを作出した。同マウスの休眠表現型(飢餓性休眠とQIH)を観察し、KOのないマウスの休眠表現型との比較を行った。現在、候補となっている29遺伝子を順次検証していっており、16番目の遺伝子まで1次スクリーニングが完了している。in vitro休眠表現型解析に関しては、成体マウスからサンプリングした肝臓の代謝測定をフラックスアナライザーで測定することに成功しており、C57BL/6J、MYS、STM2という休眠表現型の異なる近交系マウスの肝臓の代謝を測定した。ハムスターの生殖工学については、人工光(特に長波長)を遮断した上で目的のステージの胚を効率よく取得することに成功した。また、胚の採取から移植までの生体外胚操作技術を実施するにあたり、培地の最適化に取り組んだ結果、比較的効率よく胚盤胞期胚にまで発生する条件を見出した。これらの条件下にて前核期胚に対してマイクロインジェクション法によるCRISPR/Cas9システムを用いたチロシナーゼ遺伝子ノックアウト(KO)を試みた結果、両染色体の標的遺伝子座に欠損をもつKOハムスターの作製に成功した。
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