研究領域 | 細胞内寄生性病原体の自己・非自己の境界を決めるPLAMPの創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05772
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
新崎 恒平 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (70609990)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
|
キーワード | PLAMP / レジオネラ / レジオネラエフェクター / Rabタンパク質 / 膜輸送 / 膜融合 / 小胞体 |
研究実績の概要 |
本申請研究は、以下に示す3つの解析を中心として行なっており、レジオネラの宿主細胞内における自己化PLAMPの解明を目的としている。当該年度の研究実績の概要をテーマごとに記載する。 1:LCVのリソソームへの輸送経路の遮断機構の解明:Rab5のユビキチン化を引き起こすレジオネラエフェクターの遺伝子を破壊したレジオネラ株を含むLCVにRab5が有意に集積することを見出した。また、レジオネラは活性化した(GTP型に変換された)Rab5を特異的にユビキチン化していることを見出した。
2:LCVの小胞体への移行機構の解明:当該年度において、Rab33BのLCVへのリクルートに寄与するレジオネラエフェクターがホスホリボシルユビキチン化(SidEとよばれるレジオネラエフェクターによる修飾)されたRab33Bに対して、GDF活性(Rab-GDIが結合し不活化されたRabタンパク質からRab-GDIを除去する反応)を有していることを明らかにした。
3:LCVの小胞体定着化機構の解明:当該年度において、Bap31と結合することで小胞体に到達したLCVを滑面小胞体から粗面小胞体へと移行させることに寄与するレジオネラエフェクターの宿主細胞内での局在を明らかにし、当該エフェクターのBap31と結合するサイトを同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1のテーマにおいては、Rab5のユビキチン化がLCVからRab5を除去する直接的な要因であることを示たこと、また、レジオネラが活性化型のRab5を特異的にユビキチン化していることを見出せたことは、今後の研究のデザインに極めて重要な知見となる。 2のテーマにおいては、Rab33BをLCVにリクルートする因子として同定したレジオネラエフェクターにGDF活性があることを見出せたことは、今後の解析において重要となる。 3のテーマにおいては、Bap31の機能を制御するレジオネラエフェクターの宿主細胞内での局在化やBap31との結合領域を同定できたことから、本レジオネラエフェクターの遺伝子を破壊した株に再度入れ戻す実験を行うに際して、重要なデータとなる。 以上の内容を鑑みて、該当年度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関しては、テーマごとに以下に記載する。 1:LCVのリソソームへの輸送経路の遮断機構の解明:本年度の解析によりレジオネラは活性化型のRab5に対してユビキチン化を行うことを見出している。Rab5がLCVから排除されることを鑑みると、当該エフェクターによるRab5のユビキチン化はRab5とRab-GAP5(Rab5を不活性化する因子)との結合を惹起している可能性が考えうる。今後、その可能性を細胞や精製タンパク質を用いた解析により調べる。 2:LCVの小胞体への移行機構の解明:本年度は、Rab33BをLCVにリクルートするレジオネラエフェクターにGDF活性があることを示唆する結果を得ている。なお、本結果は培養細胞を用いた発現系の実験により示したものであるが、やはり直接的な活性を示すためには精製リコンビナントタンパク質を用いた解析が必要不可欠である、そこで、今後は当該レジオネラエフェクターの活性をin vitroの系により解析する。 3:LCVの小胞体定着化機構の解明:本年度は、Bap31と結合するレジオネラエフェクターの細胞内局在やBap31との結合領域の同定を行った。今後、これら実験により得られた情報をもとに、当該レジオネラエフェクターの遺伝子を破壊した株に野生型や種々の変異体(細胞内局在が破綻した変異体やBap31と結合できない変異体)を入れ戻す実験を行い、レジオネラの小胞体定着化機構における当該レジオネラエフェクターの重要性を示す。
|