研究領域 | クラスタ/ハブダイナミズムの決定剛軟因子探索における総括研究 |
研究課題/領域番号 |
20H05777
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高田 篤 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (90643693)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | マルチモーダル一細胞 / RNAシーケンス / 精神神経疾患 / 遺伝統計 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
2020年度は、ヒト死後脳一細胞RNAシーケンスデータとゲノム解析データを組み合わせて、疾患と関連する細胞クラスタの候補を抽出する方法などを確立し、その手法を双極性障害トリオ(発端者と非罹患同胞)エクソーム解析結果に適合した。その結果、双極性障害患者で機能的な新生突然変異(de novo変異)を認める遺伝子が高発現している興奮性神経細胞クラスタを同定した。引き続いて、この細胞クラスタを特徴づける遺伝子を発現変動遺伝子解析により抽出し、そのプロファイルについてのバイオインフォマティクス解析を実施した。すると、この細胞クラスタを特徴づける遺伝子には、シナプス関連遺伝子、カルシウムイオンチャネル関連遺伝子、双極性障害のゲノムワイド関連解析で同定された遺伝子(CACNA1Cなど)、既知の神経発達障害原因遺伝子などが有意にエンリッチしており、機能的にも重要であることが示唆された。本研究成果などをまとめた論文を執筆し、現在Nature Communications誌にIn pressとなっている(Nishioka et al., 2021)。 また、本研究に応用可能な、機械学習技術(深層学習とランダムフォレストの組み合わせ)で、標準的ヒト遺伝子診断指標であるACMG/AMPガイドラインをより洗練させる方法を提案するとともに、病原性の予測が従来困難であったスタート喪失変異などの遺伝子変異の有害度を、既存のツールよりも精度よく推測するモデルを構築し、その成果を報告した(Takata et al., Med 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト死後脳一細胞RNAシーケンスデータとゲノム解析データを組み合わせて、疾患と関連する細胞クラスタの候補を抽出する方法などを確立し、その手法を用いた解析結果については、既に論文化し報告を行うなど、概ね順調に研究は進展している。また、本研究課題に応用可能な機械学習を用いたデータ解析法についても、実データを用いた検討を重ねており、解析パイプラインが整備されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、竹田班が構築したアルゴリズムでクラスタ/ハブ細胞を超高速・高精度に同定した後、これらの細胞群を蛍光もしくは分子標識し、神経活動パタンの情報を保持したうえで、一細胞RNA-seq解析を行うための技術開発を行う。神経活動記録、クラスタ/ハブ細胞のラベリング、解離細胞サンプルの調整、一細胞ソーティング、一細胞RNA-seq実験は、村山班と密に連携をとりながら実施する。本研究班は、主に取得されたデータのバイオインフォマティクス解析を行い、十分な数の遺伝子が各細胞で同定されているか、死細胞の割合が一定の範囲内に抑えられているか、一細胞ソーティングが適切に行われているか、既知マーカ遺伝子を用いた分類と概ね一致した結果が得られるかなどについての評価を行う。 また並行して、精神疾患モデル動物の一細胞シーケンス解析を実施し、取得したデータを、昨年度までに構築したパイプラインを用いて解析し、野生型コントロールや参照データとの比較を行う。各細胞クラスタにおける発現変動遺伝子の同定や、全体のプロファイルを用いた神経発達異常(遅延もしくは過成長)の有無の検出を行い、精神疾患モデル動物で推定ハブ細胞の機能不全が生じているかなどを解析するための基盤となるデータを構築する。
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