研究領域 | 細胞運命操作による植物生殖システムのリモデリング |
研究課題/領域番号 |
20H05779
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
水多 陽子 名古屋大学, 高等研究院(WPI), 特任助教 (70645142)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | 植物 / 生殖 / 花粉 / イメージング |
研究実績の概要 |
被子植物のオスの配偶体は花粉と呼ばれ、花粉の内部にはオスの配偶子である精細胞が含まれる。精細胞は花粉から発芽した花粉管の内部を通って、花の奥深くにあるメスの配偶子である卵細胞まで運ばれ、受精し種子が作られる。すなわち花粉形成や機能、受精能獲得のメカニズムを知ることは、被子植物の生殖を知る上で重要である。また、受精や種子生産のメカニズムを知ることは、育種や作物生産など、農業分野にも重要である。 本年度は、主に研究の推進に必要な実験基盤の整備と植物材料の整備、実験系の構築を行なった。まず、花粉の発生と受精過程を生きたまま解析するため、蛍光タンパク質を用いて花粉やめしべを可視化するマーカーラインを作出した。次に、花粉への一過的な遺伝子導入法の検討と、導入後の花粉を解析するアッセイ系の確立をおこなった。これにより、解析したい遺伝子を安定的に花粉へ導入し、その発生・成長過程を観察、解析することで、遺伝子機能や細胞動態を迅速に評価することが可能となった。花粉のライブイメージングについては、倒立型蛍光顕微鏡、または共焦点顕微鏡を用いて、長期間、かつ高倍率でライブイメージング可能な環境を整えた。また、花粉の発生や受精に関する遺伝子の発現解析や機能解析を行うための基盤も整えた。 これら本研究の最新の成果の一部は、2021年第62回日本植物生理学会の関連集会にて開催された当領域のワークショップにて発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーカーライン作出には時間がかかるが、必要なラインについては概ね順調に整備が進んでいる。イメージングを中心とした実験や解析についても、順次進めている。一方、遺伝子発現解析については、材料の準備などの理由から進展が少し遅れているため、次年度の前半に集中して進める予定である。また、コロナ禍の影響により、一部機器類の納品や実験材料の取り寄せなどに遅延が発生した。PCR関連用品や滅菌関連など、手に入らなくなった分子生物学用機器・消耗品もいくつか存在し、代替品を検討したり、アッセイ系を変更するなど、一部研究の妨げとなった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは必要なマーカーラインの整備を出来るだけ早期に完了する。次に、確立したイメージング手法と一過的な遺伝子導入法を用いて、花粉に遺伝子を導入し、1細胞レベルで継時的に観察する。さらに、花粉の遺伝子発現解析と機能解析をおこない、過去の知見や他の植物のホモログの情報などを参考に花粉の発生と受精能の獲得について詳細に調査する。
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