研究領域 | 翻訳速度調節機構を基盤としたパラメトリック生物学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05786
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池内 与志穂 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30740097)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | オルガノイド / タンパク質合成 / 翻訳 / 神経 / 脳 |
研究実績の概要 |
本研究では柔軟な神経らしさを作り出すパラメトリック翻訳制御の解明を目指す。申請者らが開発したマイクロデバイスの中でヒトiPS細胞から作製される神経組織を用いることによって、神経活動の強弱に依存する翻訳速度の細胞内局所的変化を網羅的に解析し、神経機能の基盤となる翻訳制御の実態と機構を明らかにする。神経細胞の局所翻訳制御の本質を、領域内で開発される新技術をフル活用することによって生体脳機能へ演繹することにより、柔軟な脳機能を支えるパラメトリックな翻訳制御機構を解明する。また、本領域のテクノロジーハブの要となる技術として神経組織を各班に提供し、睡眠覚醒、リボソーム渋滞、温度による局所翻訳制御の解明に貢献する。昨年度はヒトiPS細胞から分化させた神経組織をマイクロデバイス内でつなぎ合わせて脳内の回路を模倣した組織を作製し、その神経活動を解析した。ヒトiPS細胞由来の神経組織をつなぎ合わせることによってどの様に神経活動が変化するか解析したところ、つなぎ合わせない単独の神経組織や、直接融合させた二つの神経組織は単調で弱い神経活動を示したのに対し、束状に集まった多数の軸索を介してつなげた二つの神経組織は活発かつ複雑な活動パターンを示した。次に、オプトジェネティクス手法などを用いて神経組織の活動を制御するシステムを確立した。これにより、神経組織の活動をダイナミックに変動させることができるようになり、神経組織をつなぐ軸索束の神経活動を抑制すると組織間の活動の連携が解消する上に、組織全体の活動が著しく低下することがわかった。また、神経組織の刺激頻度に応じた神経の可塑性による応答の変化が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はヒトiPS細胞から分化させた神経組織をマイクロデバイス内でつなぎ合わせて脳内の回路を模倣した組織を作製し、その神経活動を解析した。この解析は予定通り進んでいる。ヒトiPS細胞由来の神経組織をつなぎ合わせることによってどの様に神経活動が変化するか解析したところ、つなぎ合わせない単独の神経組織や、直接融合させた二つの神経組織は単調で弱い神経活動を示したのに対し、束状に集まった多数の軸索を介してつなげた二つの神経組織は活発かつ複雑な活動パターンを示した。次に、オプトジェネティクス手法などを用いて神経組織の活動を制御するシステムを確立した。これにより、神経組織の活動をダイナミックに変動させることができるようになり、神経組織をつなぐ軸索束の神経活動を抑制すると組織間の活動の連携が解消する上に、組織全体の活動が著しく低下することがわかった。また、神経組織の刺激頻度に応じた神経の可塑性による応答の変化が観察された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はつなぎ合わせたヒトiPS細胞由来神経組織を利用し、神経活動の変化に依存する翻訳の制御の実態をリボソームプロファイリングを用いて解析する。神経組織を単独のものとつなぎ合わせたものをリボソームプロファイリングで解析し、各遺伝子の翻訳効率などの比較を網羅的に行う。つなぎわせた神経組織をオプトジェネティクス手法を用いて刺激して神経活動を変動させ、リボソームプロファイリングで翻訳制御を調べ、神経活動や可塑性に依存する翻訳制御を網羅的に明らかにする。これらの解析により、神経組織における活動依存的な翻訳の制御機構を明らかにする。
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