研究領域 | pH応答生物学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05788
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 重成 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (70604635)
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研究分担者 |
圓岡 真宏 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (70736412)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | pHストレス適応 / がん / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究ではpHに対する生物学的理解に変革を起こすべく、pH誘導型転写因子の同定という生命科学の最重要課題の一つに挑むことを主たる目的とする。予備的データとして、腫瘍で特に発現増加が認められるプロトン排出系タンパク質8種類が、低pH刺激により発現増加することをいくつかのがん細胞株で見出している。当該年度においては、より広範に本現象を確認するために、およそ15種類の肺がん細胞株において同様の実験を行うことにより、確かに細胞には低pH刺激応答してプロトン排出系タンパク質の発現誘導が行われるシステムが存在することを確認した。また、低pH刺激により特に発現増加が認められた遺伝子2種に着目することにより、遺伝子発現誘導に必要なエンハンサー領域を同定するべく、上流・下流それぞれ1500bpにおいて各200bp欠損した遺伝子欠損細胞株の樹立をスタートさせた。加えて、遺伝子クローニングの大家である長田 重一(大阪大学)の伝統を継承する圓岡(研究分担者)と鈴木 淳(研究協力者:京都大学)が中心となりExpression Cloning(Suzuki, Nature 2010)を行うべく、当該年度はまずはCRISPR-Cas9技術を用いて、低pH刺激により最も発現増加が認められた遺伝子の上流にGFPを組み込んだノックイン細胞株の樹立をスタートさせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究により、細胞には普遍的に低pH刺激応答してプロトン排出系タンパク質の発現誘導が行われるシステムが存在することを明らかにした。このことは未だ同定されていないpH誘導型転写因子が存在することを強く示唆するものである。また、CRISPR-Cas9およびシングルセルカルチャーにより、目的の遺伝子領域を欠損させた細胞株の樹立に成功し、次年度において行う約20種類の遺伝子欠損細胞株作成に向けて、万全の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、低pH刺激による遺伝子発現誘導に重要なエンハンサー領域を同定するべく、低pH刺激により特に発現増加が認められた遺伝子2種に着目することにより、上流・下流それぞれ1500bpにおいて各200bp欠損した遺伝子欠損細胞株を約20種類作成する。また、得られた細胞株の中で、低pH刺激による遺伝子発現誘導が消失したものを検討することで、エンハンサー領域の決定を行う。また、圓岡(研究分担者)においては、低pH刺激により最も発現増加が認められた遺伝子の上流にGFPを組み込んだノックイン細胞株を作成させ、Expression Cloning およびCRISPRスクリーニングに向けた準備を整える。
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