本研究では申請者ががん細胞の酸性適応機構の一端を担っていると明らかにしたlysosomal exocytosisの分子機構と、その酸性適応における種を超えた重要性を明らかにすることを目的としている。2020年度はlysosomal exocytosis依存的な酸性適応における内在性PRLの重要性について調べ、その結果酸性環境下で細胞を培養した際にPRL3の発現レベルがmRNA、および蛋白質レベルで上昇するとともにlysosomal exocytosisが惹起されること、そしてPRL3のノックダウンによりlysosomal exocytosisの上昇がキャンセルされることを見つけた。これまで行ってきたPRL高発現実験より明らかにしてきたPRLのlysosomal exocytosisおよび酸性適応における重要性と合致する結果であり、これらの結果をまとめ論文として公表した(Dev Cell 2020)。さらに、2020年度は関連分子探索として、標的既知化合物ライブラリーを用いたケミカルスクリーニングも実施した。得られた候補化合物のターゲット分子については、大阪大学医学部共同研が所持するshRNAライブラリーより個別遺伝子のクローンを入手し、ノックダウン細胞株を樹立し解析を行うことで、あるシグナル伝達経路のlysosomal exocytosisおよび酸性適応における重要性を明らかにした。この重要性はCRISPR/Cas9法による当該遺伝子のノックアウトによっても確認しており、今後この経路を介した酸性適応機構の詳細なメカニズムを解明してゆくことで、PRLに依存しない、より広範なlysosomal exocytosisおよび酸性適応の機構解明を目指してゆく予定である。
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