研究領域 | pH応答生物学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05790
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
栗原 晴子 琉球大学, 理学部, 教授 (40397568)
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研究分担者 |
久保田 好美 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (80710946)
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研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
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キーワード | pH / サンゴ / 有孔虫 / 酸性化 / 適応 / 海洋生物 |
研究実績の概要 |
「pH応答生物学の創成」を目的とする中、本研究では過去及び現在大気CO2分圧の増減によって海水中のpHが変化する点に着目してこのようなpH環境の変化に対 する海洋生物の応答、適応・進化の観点から評価する。 この目的を達成するため本研究では具体的に1.高CO2環境を示す特殊海域である活火山島である硫黄鳥島海域およびパラオのニッコー湾海域に着目して、そこに生息する主にサンゴ類による低pH環境に対する生理・生態学的応答を評価すると共になぜ低pH環境の中生き残ることが出来たのかを分子生物学的アプローチから評価、および2.過去の大気CO2濃度が急速に変化したPETM期に着目して,この時代の前後の有孔虫の化石種を用いて、これら生物がpH環境の変化に対して過去どのように応答したのかを形態学的アプローチから評価する。 本年度は1についてコロナ感染によりパラオへの渡航が叶わなかったため低pH環境に晒されたサンゴを用いた評価実験が出来なかった。一方で過去既に取られていた海水サンプルの分析結果から、ニッコー湾の低pH環境はそこに生息する生物の呼吸や石灰化によってもたらされていることが明らかとなった。さらに異なるpH環境を示す地点間ではそこに生息するサンゴの群集組成が大きく異なることが明らかとなった。このことからサンゴ種によってそのpH耐性には異なる可能性が示唆された。次年度にはニッコー湾に生息しpH耐性を有すると考えられるユビエダハマサンゴの遺伝子発現解析を評価するために、沖縄沿岸に生息する同種のユビエダハマサンゴの全ゲノム解析を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年に引き続き、コロナ感染拡大によって本研究の主要な研究サイトであるパラオへの渡航が叶わず、現地でのフィールド調査やサンゴの移植実験などを行うことが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析を開始しているユビエダハマサンゴのゲノム解析を引き続き実施する。 さらにコロナ感染により海外への渡航制限が終了した場合には、パラオでのフィールド調査を実施する。ニッコー湾において異なるpH環境を示す地点からサンゴを採集し、低pHと高pH環境それぞれの地点間でサンゴの交換移植実験を実施する。 実験終了後全てのサンプルを回収し、それぞれのサンゴの生理的応答に加えて遺伝発現に関する評価を実施する。 また湾内外での同サンゴ群集の遺伝的交流を評価するためMigSEQ法による集団遺伝学的解析を行う。 研究2について引き続き、得られた有孔虫の化石サンプルを用いてその殻密度やサイズを定量的に評価し、高CO2環境による影響を評価する。
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