研究領域 | pH応答生物学の創成 |
研究課題/領域番号 |
20H05791
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡村 康司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80201987)
|
研究分担者 |
荻沼 政之 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50825966)
|
研究期間 (年度) |
2020-10-02 – 2023-03-31
|
キーワード | イオンチャネル / 糖鎖 / pH / エンドソーム / ミクログリア / 硬骨魚類 / 酸性化 |
研究実績の概要 |
[研究代表者 岡村] (1)野生型及びHv1/VSOP欠損マウスより初代培養ミクログリアを調整し、電気生理学的手法によりエンドソーム上でHv1活性が見られるかを検証した。その結果、野生型由来の細胞のみに電位依存的なH+電流が観察され、エンドソームにおいてHv1/VSOPが機能することが示された。MDCK細胞にBioID法を適用し、Hv1/VSOP含有小胞と相互作用する可能性のある複数の候補分子を得た。この中から重要な分子を選定し、そのノックアウトマウスを入手した。 (2)Hv1/VSOPがゴルジのpH制御を通して糖鎖修飾に関わる可能性を検討するため、正常型Hv1とイオンチャネル不活性型Hv1/VSOPをそれぞれ安定に発現する2種類の細胞株(マクロファージ系培養細胞RAW264.7および神経芽細胞Neuro2A)を用いて、45種類のレクチンを固相化したレクチンアレイで糖鎖修飾の違いを比較した。しかし2種類の細胞株に共通した糖鎖修飾の違いは検出されなかった。 (3) キリフィッシュHv1/VSOPのオルソログをRT-PCRによりクローニングし、パッチクランプ法によりプロトンチャネルとして機能することを確認した。 [研究分担者 荻沼] 昨年度までに作製したpHレポーターフィッシュを用いて、休眠胚の細胞内pHの状態を1細胞レベルで解析したところ、胚の体幹部の細胞内pHが通常時に比べ約0.5酸性化していた。興味深い事に、胚の周辺部の細胞内pHは通常時と変わらず中性であった。さらに、薬剤処理によって人為的に通常発生中の胚の細胞内 pHを酸性化した結果、休眠胚と似た状態を引き起こすことができ、休眠時に能動的に胚の一部の細胞を酸性化する分子機構が存在し、それが休眠移行に重要な役割を果たす可能性が示された。Hv1/VSOPノックアウトキリフィッシュを作製し、正常に発生することを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時に計画した各研究項目について、「6.研究実績の概要」に記述した研究計画が着実に実施された。これらによりマウスのHv1/VSOPを含む細胞内小胞と相互作用する可能性のある分子を見つけることに成功し、Hv1/VSOPをノックアウトしたキリフィッシュを得るなどの進捗が見られた。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞内膜のHv1/VSOPの機能を、細胞膜の分子の機能と区別して解析するため、後者にのみ作用する薬物を用いた抑制実験を試みる。Hv1/VSOP含有小胞近傍に存在しアクチン繊維形成を仲介する候補分子の遺伝子について、ミクログリア特異的なノックアウトマウスの掛け合わせをすすめる。キリフィッシュについてはHv1/VSOPノックアウトフィッシュの形態や発生における表現型を探索するとともに、休眠現象に特徴的な細胞現象に着目して酸性化の意義を明らかにする。
|