計画研究
本研究では、ヒトにおける疾患の多様性・複雑性を内包した医療ビッグデータを用いることで、ヒトに対する安全性が担保された既存承認薬の中から革新的なシナジー効果をもたらす医薬品の組み合わせを発見することを目的として、以下の項目を実施した。① 3種類の医療情報データベースを用いた多層的データマイニングにより、薬剤シナジーを生み出す医薬品の組み合わせを新規的に発見する手法を構築する。米国FDAが管理するFAERS、およびWHOが管理するVigi-Baseの二つの国際的な副作用自発報告データベースを用いて、医薬品の組み合わせごとに単剤使用症例と併用症例の二群に分け、病態発現に与えるオッズ比が有意に低い医薬品の組み合わせを、治療効果の示唆された薬剤シナジーとして抽出を行った。② ①で見出した薬剤の組み合わせについて、遺伝子などの分子標的の側面から妥当性を評価することで、見出した薬剤の組み合わせの確度を高める。薬剤シナジーを発現する医薬品の組み合わせに関して、AI企業が提供する「CascadeEye」を使用して標的遺伝子を探索し、GEOやLINCSといった遺伝子発現データベースを用いて標的遺伝子に作用する薬剤を見い出した。③ 確立した手法を用いて新たな薬効を示す既存承認薬の組み合わせを探索し、実験的検証を行うことで手法の有用性を確認する。評価系として、ノックアウトマウスを用いた病態モデルの作成に成功し、①および②で見出された薬剤の投与を実施している。④ 新たに見出した薬剤シナジーに関して、AI班と連携し、医薬品ごとの標的分子をAIで予測することにより作用機序を解明する。薬剤シナジーに関連するパスウェイ・遺伝子発現情報をAI班へフィードバックし、疾患と薬剤のインタラクトームを作成している。この手法によって、予測した薬剤と疾患のシナジー連関を予測する。
3: やや遅れている
本研究は、他分野融合によって薬剤間のシナジー効果を見い出す研究であり、他領域の研究者との密な連携が必須である。一方で、世界的な蔓延を見せるコロナ感染症によって研究内容のミーティングや研究者間の交流・国内留学による研究内容のすり合わせの遂行が困難である。現在はオンラインミーティングの活用によって頻繁に研究ミーティングを実施することで対応している。
既存承認薬の中から見出したシナジー効果について、本研究班が実施する医療データベースやオミクスデータベースによる解析のほかに、他の班が有する技術である基礎薬理学的手法、AI技術を活用した生体分子ネットワークの構築によって妥当性を検証する。また、本研究班以外の班が見出したシナジー効果について、同じく医療データベースおよびオミクスデータベースによる検証を行い、その妥当性を評価する。くわえて、まだ検証を行っていない医療データベースやオミクスデータベースを用いることで多層的にデータ解析を実施する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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