研究領域 | 生涯学の創出-超高齢社会における発達・加齢観の刷新 |
研究課題/領域番号 |
20H05803
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松井 三枝 金沢大学, GS教育系, 教授 (70209485)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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キーワード | 認知予備力 / 神経可塑性 / 認知機能 / 脳神経疾患 / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
認知機能という観点から、思春期から成年早期に変化が認められる統合失調症および成人とくに高齢期までの脳器質性疾患や気分障害について検討する。予防的な観点から、大学生や健常成人のメンタルヘルスと適応性の調査を行ない、認知予備力や認知機能活性の介入による効果を検討する。認知機能と認知予備力の関連を検討し、社会復帰や術後回復力の予測データを構築することをすすめている。これまで、臨床応用可能となる認知予備力尺度を開発し、幅広い年齢の健常成人にそれらを実施し、その信頼性と妥当性を検討してきた。認知予備力のプロキシとして、病前知能、教育歴、仕事経験および余暇経験が考えられ、これらを盛り込んだ日本語版の尺度を作成し、20歳から90歳までの対象者に調査を行なった。計4回の調査結果により、本尺度の信頼性と妥当性を確認することができた。高齢者だけではなく、幅広い年代に対応した標準化された尺度としての有用性が示唆され、本研究で得たデータを基礎データとして、臨床患者での応用に進めることとなった。統合失調症患者を対象に、患者の認知機能障害に対する家族評価と患者による主観的評価と認知予備力および客観的認知機能との関連の検討を行った。この研究によって、認知機能障害に対する患者の主観的評価と家族評価に相違があり、家族の評価に関しては、患者の病前の知的機能水準が影響する可能性が示された。また、双極性障害患者における認知機能の潜在的な保護因子を明らかにすることを目的として、認知機能と認知予備力及びレジリエンスの関連性について、神経心理学的検査、発症前のIQ、教育年数、余暇活動経験数、レジリエンス尺度を用いて、患者と健常対照者を対象に、横断的調査を行ってきた。さらに、脳損傷患者と認知症における認知予備力、認知機能および脳画像との関連をみるためのデータを構築しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精神疾患患者については、統合失調症患者と気分障害患者に主に焦点を当てているが、コロナ状況が続いたので研究実施の制限があり、とくに精神疾患患者への検討を十分にすすめることが困難であったため。なお、神経疾患については、脳損傷患者および認知症患者のデータ収集と解析をある程度すすめることができてきている。
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今後の研究の推進方策 |
A.健常成人のメンタルヘルスと認知機能活性・認知予備力との関係 健常者でおこなったメンタルヘルスの調査と認知予備力の関係を引き続き検討する。認知予備力については、教育歴、仕事歴、余暇活動経験、病前知能を指標として、標準化された半構造化面接によって聴取する。聴取された情報から認知予備力指数(Cognitive Reserve Index: CRIq)を求めることが可能となる。この際、代表者が開発してきた認知機能活のための介入と日本語版CRIqの妥当性の検討を引き続きおし進める。また、健常者の認知機能と認知予備力および脳機能画像との関係を調べるためのデータ収集と解析をおし進める。 B.統合失調症・気分障害患者の認知機能と日常生活/社会機能および認知予備力との関係 統合失調症と気分障害患者の認知機能と日常生活機能および認知予備力との関係の検討をおこなうためのデータ収集をおこなう。認知予備力については、教育歴、仕事歴、余暇活動経験、病前知能を指標として、Aの調査と同様標準化された半構造化面接 によって聴取する。聴取された情報から認知予備力指数を求め、認知機能検査の結果との関係を調べる。 C.器質性脳疾患および認知症の認知予備力と認知機能・日常生活機能および脳病変との関連 認知機能検査・日常生活機能評定と認知予備力項目を聴取し、症例を積み重ねる。また、通常臨床で撮像されている脳画像検査(MRI)にもとづいて、脳の病変部位を同定し、その大きさを測定し、それらと認知予備力指数との関連を検討する。さらに、安静時の機能的脳画像(fMRI)も通常臨床で撮像されており、脳機能(脳活性状態)に関する分析も行ない、同様に認知機能や認知予備力指数との関連を検討するために、引き続きデータを蓄積する。
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